2018シンシナティ2回戦 vs. バブリンカ レビュー

2018 Cincinnati (Masters 1000)
2nd Round
Stan Wawrinka[WC] def. Kei Nishikori, 6-4,6-4

まず初めに申し上げたいことがあります。

モンテカルロ準優勝
ウィンブルドンベスト8

どうです、落ち着きましたか?w

言いたいことは、「過去の栄光にすがれ」という意味ではありません。
いろんな視点を持ちましょうということです。
今日の試合だけを見れば非常に残念な結果であり、内容でした。全米オープンに向けた視界も良好とは言えません。
このあと私も厳しめのことを書くと思います。
しかし、短期的、中期的、長期的なスパンでそれぞれ見ていかなければならないと思うのです。
その上で、今年の上記2つの実績は忘れてはいけないと思うので、書きました。

それではレビューを始めますが、超超長文&とりとめがないので覚悟してください(執筆後に記載)。
そんなに時間取れないのでまったく推敲しておりません。言いたいことが分からないと思いますがその場合は質問してくださいw

今日の試合は、プレビューで書いた心配がそのまま出てしまいました。
バブリンカは最初からブロックリターンを多用。
これを落ち着いてフォアで攻撃していければ主導権を握れたのですが、そのフォアが乱調でした。
1ブレイクして4−2からのサーブ。ブロックリターンをもらってフォアをストレートへ。しかしこれが大きくアウト。
スライスがかかって打点が低かったとはいえ難しい球ではありませんでした。強打するでもなく。
この1本で済むのなら問題はありませんでしたが、次はバックハンドのクロスをサイドアウト。
これも凡ミスでした。

あっという間に0−30。次のポイントはさすがに大事に行こうとバックのクロスで組み立てますが、先に角度を付けられ、スライスを狙われてバックDTLを食らいます。
プレビュー記事で述べたパターン通りの展開・・・。やはり狙っていました。

このポイント単体で悪いのではなく、やはりそれまでの2ポイントでカウントに余裕が無くなったことが問題でしょう。
サーブの確率も低く、フリーポイントで挽回することもできませんでした。

4−4の第9ゲームでもフォアを攻められ0−40となります。振り返ります。

・セカンドサーブをフォア側にリターンされ、打点が遠く手打ちとなりネット。0−15
・セカンドサーブをフォア側にリターンされ、打点が遠く手打ちとなりネット。0−30(サイドは違えど全く同じパターン)
・ファースト入り、ブロックリターンをもらってバッククロスへプレースメントは良かったが、スピードがなくバックDTLでウィナー食らう。0−40。

と、全部フォア側を攻められています。サーブも良くありません。
ここで安易なバックへの球はいかんと思ったのか、

・バブリンカのフォア側へ打ってネットプレー。15−40。
・1stサーブをボディへ。30−40。
・センターへのエースでデュース。

ここで踏みとどまればまた違った展開もあり得たのですが、

・セカンドサーブからフォア側を攻められ、1,2ポイント目と同様に食い込まれて手打ちでネット。
・浅いリターンをもらったが、フォアのアプローチが手をコネてしまってスピン過多の甘いアプローチとなり、フォアのハイボレーとスマッシュも決めきれず、フォアでフォア側に逆襲食らってブレイク。

と、すべてフォアがらみで重要なゲームを落としてしまいました。

バブリンカのサービスゲームは1度ブレイクされて以降、危なげなし。
アドサイドからのセンターのエースを幾度となく取られ、セカンドサーブのリターンもミスが多かったです。

直接の原因はフォアだったと思いますが、この序盤から出たセカンドサーブへのリターンミス(少なくとも序盤に4本はあった)が非常にもったいなかったと思います。
ラリーで取る錦織なのですから、ラリーに持ち込めないとプレッシャーをかけることができません。
バブリンカはせっかちですから、まずはリターンを返してしつこく行くことが必要だと思うのですが、これによってバブリンカのメンタルを復活させてしまいました。序盤はミスも多く、緊張があったと思うのですが。

それでもセカンドセットになると錦織がガラッと変わるというのを何回も、いや何十回も(ひょっとしたら100回くらい?)見せられているので期待はあったのですが、最初のサービスゲームをいきなりブレイクされて非常に苦しくなりました。

30−15からフォアで上手く攻めながら、バックのアプローチが浅く、ネットへの詰めも遅く、バブリンカのバックハンドのストライクゾーンに行ってしまったが悔やまれます。
その後はフォアのアウト、バックのアウトであっさりブレイクです。

スタッツではフォア17本、バックが3本のミスということで、フォアハンドが最大の問題であったことは間違いがないのですが、バックハンドについても1st 4−2の0−15から、このゲームの甘いアプローチと最後のミスと、大事なところでのミスが出てしまいました。
スタッツには現れない、2ndに対するリターンミスもありました。

バブリンカのプレーは素晴らしかったと思いますが、それをさせてしまったのは間違いなく錦織のまずいプレーでしょう。
トロントのハーセ戦と全く同じ展開で残念でした。

フォアハンドは技術的なものだと思います。
テイクバックで肘から引くのですが、これは力が入るとラケットが前に出てこない要因になります。
ときどき私が「低いテイクバックが良い」と言っていると思いますが、その時はラケットヘッドがスムーズに後ろに行き、後ろから前へのスイングが強調されています。ただし、パワーには欠けるフォームです。

ボディターンをしたとき、ラケットが体に近すぎること、肘が背中側に引かれていることが問題だと思います。それでもリラックスできていれば打てるフォームです。これらの癖は、脱力してフルスイングできてこそ活かされるものです。力が入って、スイング開始が遅れているように見えます。

同時に、ボールの軌道の理解もできていないのではないかと見えてしまいます。
放たれた瞬間にボールの軌道は決まっています。それを瞬時に理解し、フットワークで最適な打点に入り、早いテイクバックから迷い無く振る必要があります。全てのプロはこの動作を考えることなしに、一瞬のうちに行っていてもちろん錦織にもそれができるのですが、この「考えずに行う」ことができなくなっているように見えます。
ミスの仕方にも「理解できるミス」と「理解できないミス」があって、「あれ?ちゃんと打ったはずなのに」という「理解できないミス」がやっかいです。
「ミスしたけど今のはいい当たりだった」というミスなら問題ありません。
今日の錦織はミスに首をかしげる場面もあり、「理解できない」ミスが出ていたようです。
かといってバブリンカは、悠長に繋ぎながら修正することなど許してくれませんから、なかなか挽回することは厳しかったと思います。
やはり、挽回しなくてすむ状況を保つことが何より重要です。

「崩れた」というほどではありませんでしたし、特に体調に問題があったようには思いません(手首、肘など万全ではないにしても)。
全体的に力強さが足りないという感じで、なんとももやもやします。

ワシントン、トロントの段階ではあまり心配していませんでしたが、それはシンシナティ、全米と徐々に調子を上げることが前提だったわけで、今日の段階でこの内容では全米に向けて視界は良好とは言えないでしょう。

しかしそれも「現段階では」というだけで、大会が変わればテニスも変わります。
これは現状認識であって、予測ではないことにご留意ください。

「今のままでは」、そりゃあダメです。
ただ、内容的に試合運びのまずさが大きく関係していると思うので、きっかけがあれば変わってくるようにも思います。
故障すれすれの体調というわけでもなく、消耗せずに全米に臨めることだけがいい材料ですかね。

私は、まずは考えすぎず体のキレの回復に努めることが効果的だと思います。
短期間に抜本的にいろんなことを変えれるわけではなく。
全米でいい結果を出せばいいわけですから、これまでの結果は忘れる。全大会でいい結果を残す必要はない。
最終的に勝てれば良いという考えに変える。
1試合1試合をクリアすることに集中する。もっと言えば、ゲームを取ること、目先の1ポイントに集中する。

そろそろ、「次の対戦相手は知らない」ではなくて、相手を研究して欲しいなとも思います。
バブリンカはこれまで通りの作戦で来ましたし、錦織をしっかり研究しています。
ブロックリターンをくれることは分かっているのだから、170km/h台の1stを65%くらい入れればかなりの確率でキープできたはずです。
セカンドサーブのリターン返球率を上げたら、たとえストロークで決められ続けても、キープ合戦となり土壇場でQSPK(急に セットポイント 来た)が期待できたかもしれません。
2014全米ではこのパターンでQMK(急に マッチポイント 来た)じゃありませんでしたっけ?

やっぱり、先行逃げ切りパターン、これを確立してほしいです。
人より挽回力があっても、挽回できる確率は50%はないでしょう。

全米に向けて良い状態ではありませんが、長い5セット、長い2週間の大会は、大会中にもどんどん変わっていきます。
思い出すチャンスもたくさんあります。経験はすでに持っている錦織、「実績ある選手はランキング落としてても怖い」と常々言っていますが、今錦織がその状態だと思います。短期的には良くない状況、中期的(復帰から今まで)はまずまず、長期的(これから2〜3年)については、このまま上がれない可能性も、上がっていく可能性も両方あるという感じかと思います。他の選手を見ても、数ヶ月間の間、成績が出ないなんてことは良くあることです。その代わりに爆発が欲しいところですが、冒頭に書いた、

モンテカルロ準優勝
ウィンブルドンベスト8
(しつこいw)

これを忘れてはいけません。
これらの大会のような成績は時々、ありえます。

逆にこういういい成績を残した後、それが続くと考えてしまう方を抑制したい。
そんなに簡単じゃないよ、と。
2014全米がスタンダードではありませんよ、と。
逆に今日のテニスがスタンダードでもありませんよ、と。
今日の錦織は調子の悪い錦織です。
調子が悪いが何回も続けば、そこではじめて「ノーマル錦織」に対する期待値を変える。
逆に調子の良い錦織が何回も続けば同じように「ノーマル錦織」を変更する。
こういった感じで期待値を徐々に修正していけばいいと思います。

ワシントンの段階で錦織の調子を心配していた方は、「先見の明があった」と思うかもしれませんが、先のことなど我々にどの程度分かるでしょうか。
私にはまったく分かりません。全米で錦織がどういったテニスを見せるのか。
言えることは錦織は実績があるし、これまでも度々、我々を驚かせて来たこと。
一方でここ1、2年の負け方には傾向があるし、課題も明確にある。他の選手達は錦織のテニスに対応してきていること。
いつまでも良いことはないし、いつまでも悪いことはないこと。

そのくらいです。
10年以上錦織を見てきて、こんなことくらいしか分かりません。
それがプロの世界だと思います。
我々(アマチュア)の世界では、風邪を引いた第1シードが市民大会レベルで繋ぎ繋ぎプレーして地力で優勝する。こんなことは良くありますが、プロの世界ではほんの少しのコンディションの差や試合展開、1ポイントの何気ないミス、が影響してしまいます。
となると方法は、「1ポイントも集中を切らさずプレーする」か、「ミスしてもそれ以上に決める」かしかありません。
錦織はどっちかといえば前者かな? でもそれはなかなか難しい、誰にとっても難しいです。
後者の要素をもっと取り入れて欲しいと思いますし、いいときの錦織はそうだったと思います。

4−6,3−5でマッチポイントを握られたとき、バックDTLをライン一杯に打ち込み、バブリンカのラケットを弾いたプレーがヒントになります。
コースはそんなに良くなかったが、迷わず振って力で押しました。
変に上手くプレーしようとするより、こういうプレーを増やしたい。

今の錦織のプレースメントははっきり言って甘いです。そんな中、上手くプレーしようとするより真ん中でも力のある球を打った方が良いのではないでしょうか。
プレースメントの甘さはデータにも出ています。


(from Tennis Live Stream – Watch Live Tennis Online in HD)

バブリンカと錦織の、1回戦のプレースメントのデータです。上がバブリンカ、下が錦織。

錦織の方が全体的に浅く、またセンター付近の球が多いです。
コーナー付近に飛んだ球の数の差が特に顕著です。
アドサイド側への配球が多いのも特徴です。
1試合だけでのデータですが、イメージと近いデータでした。基本、もっと深く行かないとラリーでも厳しいと思います。

やれることは今からでもいくらでもあります。
まずは気持ちのリセット。これまで何回もいいプレーしているのだから、できると信じること。我々もやってくれると信じること。できなくても次を応援する気持ちを絶やさないこと。

応援し続けた者だけが、歓喜の瞬間を味わうことができます。

106 件のコメント

  • ゆきんこり⛄ さん、観戦レポート!!ありがとうございます(`・ω・´)ゞピシッ!
    ルブレフ選手を相手に勝ち切ったのは凄いことですよね~\(◎o◎)/!
    ギルバートコーチの教えを忘れずにいることを評価されるべきですよね~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
    ワウリンカ選手戦でも、戦意喪失?どこがだよ(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
    戦意喪失してたら、第2セットは 0-6 だよ~と思います(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
    ゆきんこり⛄ さんのコメント、つぶやきを読ませていただくと、自分の見解が大きくズレていないと安心します(`・ω・´)ゞピシッ!

      引用  返信

  • シンシナティはジョコビッチ。
    あのフェデラーでさえ、ジョコビッチには平常心で戦えない。ウィンブルドンでナダルを押し切っての勝利に加えて、ゴールデンマスターズをフェデラー相手に達成と、これでusの本命に踊り出ましたね。

    ぐう様
    ワウリンカのGS初制覇の年齢訂正ありがとうございます。何を勘違いしたんだか、、、錦織にとって次戦usオープンは年齢的にワウリンカの2014全豪にあたるのですねー

      引用  返信

  • ジョコビッチ選手、全マスターズタイトル制覇、おめでとうございます!
    前人未到の偉業ですね。
    キャリアグランドスラムよりも難しいかもしれません…
    こんな歴史的瞬間を体感できるなんて、我々は幸せ者です。

    さて、錦織選手、全米前哨戦シリーズは、不完全燃焼に終わってしまい、残念でした。
    何か歯車が噛み合っていない印象がありましたが、本人もどう修正したらよいのか、わかっていない感じでしたね。

    原因の1つに疲労があるのでは、と思っています。
    例年より始動が遅かったため、例年芝にくる疲労がここにずれ込んでいるのでは?
    全米まで、しっかり疲労を抜いて、フレッシュな気持ちで臨んでほしいと思います。

    偶数年の全米は縁起がよいはず!
    頑張れ~

      引用  返信

  • ジョコビッチ、グランドマスターズ達成ですね、おめでとう。完全復活どころか、また進化したようで怖いですね。

    ウィンストンではダニエルが無事初戦突破。杉田はまたもや初戦敗退。杉田の闇の出口が見つからず心配です。

    しかしこちらの皆さんは、ものの見事に錦織以外に触れなくなりましたな。完全なる自主規制。素晴らしい。テニスファンが集うブログとはとても思えない。
    この状態、本当に団長さんの本意でしょうか。全米の錦織初戦プレビュー記事が立ち上がるまでは、ダニエルや杉田やマクラクランの動向も西岡のエキシビにも一切触れられないこの空気が蔓延するのでしょうか。
    自分はもう、コメント欄はほぼスルー、フォーラムが俄然楽しく有意義になっています。

      引用  返信

  • 錦織選手参加中の大会時はこちらで大盛り上がり!
    ゆきんこりさんらの現地報告というご馳走も時にあり!
    他の話題は興味のある分野を探してフォーラムへGO٩( ‘ω’ )و

    みんなの話し合いから着地したこのあり方はなかなか優れものと(⌒▽⌒)
    フォーラムの内容を全部こちらに持ち込んだら。゚(゚´Д`゚)゚。
    そりゃあもうあっちからこっちから、ブ〜ブ〜|( ̄3 ̄)|
    フォーラムは言いたいこと、聞きたいことを自主規制することなく書き込めるし。
    100%の完璧な方法はないと思うので、程よい落とし所で楽しませていただくのが
    一番かな…………………と、私は思っています(*´ー`*)

      引用  返信

  • カムイさん、コメントありがとうございます。
    私も29歳だと思っていて、念のため確認したら28歳と10ヶ月前後だったことを知りました。記憶って曖昧ですね(^^)
    チリッチのコーチだったイバニセビッチも、30歳を目前にしてのウィンブルドン初優勝。
    錦織選手にも、いつの日か日本人GS初優勝の偉業を達成してほしいですね(^^)

      引用  返信

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。