テニスの物理 | 錦織圭を鼻血が出るまで応援し続けるブログ
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Die-Hard Nishikori Aficionado

錦織圭のペース配分(テニスの物理:数学編)

水曜日, 3月 3rd, 2010

GAORAのデルレイビーチの放送の中で丸山薫さんが、

「錦織と話していたら、USオープンフェレール戦の話題になって、第4セットはわざと落としたと言っていました。大物だ。」

と言っていました。

いわゆるWSOですね。

W わざと
S セット
O 落とす

いや、いわゆらないか・・・。このブログ専門用語ですね。

もちろんセットは取れた方がいい、というかセットを取っていかないと勝てないわけですが、すでに劣勢になった第4セットを頑張って取るよりも、体力を温存してファイナルセットに賭ける方が勝算が高いと考えたのでしょう。

と、書けば簡単なのですが、コトはもっと複雑です。

例えば0-4になると、そのセット(仮に第4セットとします)を取れる確率は最早高くありません。仮に5%としましょう。

ここから頑張って食らいついてこのセットを取ろうとしたら、それが10%に上がるかもしれません。

しかしWSOしたら、1%になるかもしれません。

全力で取りに行くと、セットを取れる確率は多少上がるでしょうが、その代わり疲れてしまうので、

このセットを落とした場合に次のセットを取れる確率が例えば30%に落ちてしまうかもしれません。

この場合、WSOするか、取りに行くかでどっちが有利でしょうか?セットカウント2-1の0-4の場面を想定します。

考えタイム

考えタイム

考えタイム

(1)WSOする場合

第4セットを取れる確率 1%
ファイナルセットを取れる確率 50%

とします。

勝利できる確率 1%+(100%-1%)×50%=50.5%

(2)第4セットを全力で取りに行く場合

第4セットを取れる確率 10%
ファイナルセットを取れる確率 30%

とします。

勝利できる確率 10%+(100%-10%)×30%=37%

と、WSOした方が勝てる見込みが高くなりました。

もちろん、こんなのは数字のお遊びです。

ここでは確率として適当な値を想定しましたが、こんな値になるとは限りませんし、そもそもセットを取れる確率を測ることが不可能です。

そこにはプレーする選手の感覚があるだけです。

WSOしたら、ファイナルセットの獲得率が上がると目論んでいても、第4セットを献上してしまったばっかりに相手が調子付くかもしれません。

相手があるスポーツですから、不確定要素が大きいです。

しかしそれでも錦織はWSOを選びました。そこには緻密な計算があった!・・・とは思えませんが、タイプとして、切り替えがうまい選手なのでしょう。

私は、一般プレーヤーはあまり真似できない、しない方がいいと思いますw

キープ力の高いプロの試合で逆転してセットを取ることはかなり難しいですが(だから、北京での0-5からの逆転セットはすごく話題になった)、一般プレーヤーの場合は流れひとつでなんとかなることも多いものです。

WSO(わざと セット 落とす)のつもりがWSO(私から 試合 落とす)にならないよう気をつけたいものです。

ストリングのテンションとトップスピンの関係(テニスの物理)

土曜日, 2月 13th, 2010

先日こんな質問を受けました。

「もっとスピンをかけたいのですが、ガットをもっと硬く張った方がいいでしょうか?」

実験によるとテンションを変えてもスピンの量は変わらないそうです(出所:Technical Tennis: Racquets, Strings, Balls, Courts, Spin, And Bounce
, p.80)

しかし、それでも私は「スピンをかけたいなら硬い方がいいです」と答えました。

なぜでしょうか?

まず、高いテンションと低いテンションでは、打ち出し角度が違います。
(参考記事:ラケットのテンションを落としてもボールスピードは速くならない(テニスの物理)

すなわち、低いテンションの方が角度にして2度ほど上に飛びます。

この効果により、テンションを上げるとボールの飛距離が出ませんので、それを補うために人は強く打とうとします。

スピンの掛かり具合が同じでも、強く打てば多くスピンがかかります。

これが第1の理由です。

第2の理由は錯覚によるものです。

上の参考記事のタイトルはちょっと不適切でして、

「ラケットのテンションを落としてもそれほどボールスピードは速くならない」

が適切でした。

テンションを60ポンドから50ポンドに落とした場合、60mphのストロークの速度が1.2mph増したそうです(同じく「Technical Tennis」より)。

率にして2%。

大きな差ではありませんが、一応、低いテンションではボールは速くなります。

このように、スピン量は同じでもボールスピードが(多少)違うので、

ボールスピードに対するスピン量の比

は、高いテンションの場合に大きくなります。

つまり、同じスピン量に対してボールのスピードが遅くなるので、「見かけ上」たくさんスピンが掛かっているように見えます。

実際、高いテンションの方がスピンが掛かるという感覚をもっていらっしゃる方が多いと思いますが、それは上記2つの理由によるものだと思われます。

「テンションを高くするとスピンが掛かる」ではなくて、「スピンを掛けたかったらテンションを高くすると上手く行きやすい」という認識が適切だと思われます。

ボレーは振るべきか?振らないべきか?(テニスの物理)

金曜日, 2月 5th, 2010

錦織の復帰が延期になりましたので、またしばらく私のヨタ話にお付き合いしていただくことになりましたw

今日はボレーは振るべきか?振らないべきか?について考えます。

ボレーはストロークと違い、打つまでの時間的余裕がありません。

ストロークのような大きなテイクバックとスイングをしていては、間に合いません。

そこで初心者に対しては、

「ボレーは振るな!」

というアドバイスが必ずと言っていいほどかけられます。

まずは最初のステップとして、ボレーには大きなテイクバックは禁物なことを理解させるためには重要なアドバイスだと思います。

間に合わない、という他にも、大きなテイクバックはムチャ振りにつながり、ボールをコントロールすることができなくなる弊害があります。

しかしながら、当てるだけではいいボレーが行かないのも事実です。

上級者はテイクバックはコンパクトですが、よく見ると意外とスイングしてボレーしていたりします。

小さいスイングだとしても、スイングスピードはしっかり出ているはずです。なぜなら、そうでないと良いボールが行かないからです。

そう、ボレーはスイングして良いのです(どうスイングするかが問題・・・)。

その理由は、私の大好きな物理法則です。

下に置いたストリング面(両端が固定されている)に対して、1mの高さからボールを落としたら約85cmの高さまで跳ね返ります。

つまり、反発係数は0.85です。

しかし、スイングを伴なう実際のプレーにおいてはこんなに高い数値にはなりません。

例えば時速100km/hで飛んで来た球に対して、時速50km/hのスイングスピードで打ち返したとします。

ストリングの反発係数が0.85のままだとしたら、100km/hの球は85km/hで跳ね返され、それに50km/hのスイングスピードがプラスされますから、

85+50=135 km/h

で飛んでいくはずですが、実際には例えば 100km/h だったりするのです。

この場合、

100km/h × 0.5 + 50km/h = 100km/h

と分解されます。この 0.5 は「見かけの反発係数」と呼ばれます。単純に、実測値から逆算しただけのものです。

ストリング本来の反発係数が0.85なのに対して、飛んでくるボールやスイングのスピードによってこの逆算した「見かけの反発係数」の値は変わってきます。

その値はスイングスピードによりますが、だいたい0.2~0.5の範囲に収まるそうです。

なぜ0.85より小さくなるかと言うと、これはラケットが固定されていないからです。

どんなに強く握っていたとしても、実際のスイングにおいてはラケットは「片持ち」の状態ですから、ラケットは後ろに押され、減速されます。

両端を固定した状態での反発係数0.85より小さくなるのはこのためです。

さて、以上のことから分かるのは、実際のプレーでは最大でも0.5くらいの反発係数しか得られないということです。

長々と書いて申し訳ありませんでしたが、言いたいことはこの部分ですw

100km/hという速いボールがやってきても、スイングしなければ返っていくボールは最大で50km/hです。

おそらく、実際にはもっと遅いでしょう。

当てるだけでもボールは返っていきますし、角度をうまく調節すればいいところにプレースメントすることも可能でしょうが、「いいボール」を打ちたければ、(特に遅いボールに対しては)スイングするしかないと思います。

繰り返しになりますが、スイングの仕方が問題です。

もし、「ボレーは振るな」のアドバイスを忠実に守りすぎて威力のないボールしか行かずに悩んでいる方がいらっしゃったら、思い切ってスイングしてみるのも手だと思います。

あ、C太郎さんはまだ振っちゃだめよw

5ポンドのテンションの違いが分かるか?

日曜日, 11月 29th, 2009

同じラケット2本を、1本は55ポンド、もう1本は50ポンドで張って打ち比べてみました。

テンションの違いは感覚的には分かっているものの、あまり同時に打ち比べてみることはなかったので、試してみようと思いました。

一般的な感覚と異なり、テンションを変えてもボールのスピード自体はほとんど変わらないということは、「テニスの物理」シリーズでも述べましたが、それを確かめるという目的もありました。

どちらのテンションのラケットを使っているか分からないようにして打ち比べてみましたが、どっちのラケットを使っているかは明らかでした。

一番の違いは「音」です。

テンションが高い方(55ポンド)が打球音が高く、テンションが低い方(50ポンド)は低い打球音でした。

飛びに関して言えば、注意深く見ましたが、確かに大きな差はないと思いました。

耳栓をして打ったら多分、どっちがどっちか分からなかったのではないでしょうか。

特にセンターで打った時の打球感はほとんど一緒です。

オフセンターになると、55ポンドの方がやや衝撃がある気がしました。

音や振動などに代表される「打球感」というものの違いが、ラケットの差を決定づける大きな要因だと改めて思いました。

言いかえれば、「信頼感」だと思います。

「このラケットの感覚は好きじゃない」と思えば、たとえボールの飛びがほとんど同じでも思い切り振れなかったり、フォームが変わったりと悪影響が出てきます。

逆に「このラケットは私に合っている」と思えば思い切って振れ、結果いいショットが行き、ラケットの信頼感が増すという好循環になると思います。

Cross教授の教え

「ラケットの性能は、重量とその配分、そしてフレーム(とストリングを合わせたラケット全体の)剛性でほぼ決定される」

に100%同意している私ですが、それでもこの「ラケットに関する精神的なもの」は無視することができません。

Cross教授の本によると、テンションの緩いラケットはテンションが高いラケットと比較してボールが上に飛ぶ傾向があり、それが「緩いラケットはボールが飛ぶ(スピードが出る)」という一般的な印象につながっているとのことですが、そのことが気になって、ポイント練習では50ポンドのラケットをうまく使うことができませんでした。

実際は5ポンド程度の差ではあまり影響がないでしょうが、ボールが上ずってアウトしそうな気がしたのです。これは完全に精神的なものだと思います。

普段は55ポンドで張っているのですが、実際の張り上がりというよりは「50とか55という数字」に翻弄されている気がしました。これはちょっとショックでした。「テニスの物理」を語るものとしては・・・。

まだまだ修行が足りんのう、というローテンション仙人の種さんの笑い声が聞こえてきそうです。

ガットのテンションを20ポイント変えると、ボールの到達位置がどれだけ変わるか(テニスの物理)

金曜日, 11月 13th, 2009

【お願い】明日の錦織圭トークイベント@南砂町に参加される方、いらっしゃいましたら、簡単で良いのでどんな感じだったかレポートしていただけないでしょうか。どうかよろしくお願いしますm(_ _)m

インパクトにおいて、ボールがラケットに接触している時間は0.005秒前後だそうです。

この時間は、スイングを多少速くしたり、多少速いボールが飛んできたところで、ほとんど変わらないそうです。
(変化の方向としては、これらは接触時間を短くします)

しかし、ガットのテンションを上げると、多少は接触時間が短くなります。

例えば50ポンド(接触時間0.005秒)から70ポンドに変えると、接触時間が0.001秒短縮されて0.004秒になります。

(出所:Cross & Lindsay, “Technical Tennis”, pp.84)

仮に時速80kmでラケットを振っているとすると、この0.004秒とか0.005秒の間にラケットが進む距離は以下の通りです。

50ポンド(接触時間0.005秒)・・・11.1cm
70ポンド(接触時間0.004秒)・・・ 8.89cm

その差・・・2.21cm

と、この数字だけ見れば、大差ないように見えます。2cmなんて、指1本分くらいですから。

しかし、この接触時間の違いを、実際のスイングに当てはめると、ボールの着地点に対して意外と大きな違いを生み出すことが分かります。

今、ベースラインの位置から「完全に」地面に水平なスイングでボールを打つ場合を考えます。

スイングスピードは80km/h、スイングの半径を1mとします。

この場合、接触時間0.005秒と0.004秒の差、0.001秒の間に、ラケットは1.27度も回転するのです。

つまり、同じ位置から同じラケットを使い、同じスイングした場合、ガットのテンションが20ポンド違うと(50ポンドと70ポンド)ボールの飛びだし角度は左右方向に1.27度も違うということです。

この角度の差によって、ベースラインから打つ場合、反対側のベースラインに到達するときには左右方向に約50cmの差が生じる計算になります。これは無視できません。

左右方向の差ならまだましで、上下方向にラケットを振る場合の1.27度の差は、ボールの落下地点の差に対してもっと大きな影響があるでしょう(計算していません)。

マッケンロー(40ポンド以下)とボルグ(80ポンドくらい)の2人だとその差はますます大きいものとなり、仮に2人がラケットを好感してプレーしたら、少なくとも最初のうちはむちゃくちゃになるのではないでしょうか。

ボルグのフォアハンドはアウトしまくり、マッケンローのコーナーを狙ったボレーはサイドに切れていくかボルグの正面に飛んでいくことになるでしょう。

しかし安心してください。普通は20ポンドもテンションを変えることはないでしょう。せいぜい2~5ポンドくらいじゃないでしょうか?

このくらいだとそれほど飛び方に違いがでないので、差を感じない人も多いと思われます。

ただ、元々緩んでいたガットが切れた直後にガット張りたてのラケットを振る場合もあると思うので、そのような場合は結構なテンションの差があることになるでしょう。

フォアハンドが思ったより右に飛んだり、下に飛んだりしたときは、ガットのテンションがいきなり上がったからかもしれません(右利きの場合)。覚えておいて損はないでしょう。

ラケットの重量、バランス、スイングウエイトをカスタマイズする方法(テニスの物理)

水曜日, 11月 11th, 2009

島さんとコメント欄でラケットの重さ談義に花が咲いたので、例によって「Technical Tennis」に何か書いてないか調べたところ、そのものずばりの項目がありましたので、概要を書きます。

0972275932 Technical Tennis: Racquets, Strings, Balls, Courts, Spin, And Bounce
Usrsa 2005-09-28

by G-Tools


  • 5gの鉛テープをラケットのトップあるいはグリップエンドに貼ると、バランスポイントは約5mm移動する。
  • 10gだと約10mm移動する。
  • バランスポイントを変化させずに重量とスイングウエイトを増やしたければ、バランスポイントの左右に例えば10gずつ鉛テープを貼れば良い。
  • スイングウエイトを減らす唯一の方法は、ラケットの重量を減らすことである。
  • これは通常、あらかじめ貼ってあった鉛テープをはがす等でない限り無理であるが。
  • 通常、スイングウエイトはグリップエンドから10cmの距離を基準に計測される。
  • したがって、グリップエンドから10cmの距離のところにおもりを付けても計算上はスイングウエイトは変化しない。
  • しかし実際のスイングにおいては回転の中心は手首や肘の近くにあるので、この場合でもスイングウエイトはかなり上昇する。