力負けの敗戦だが、セカンドセットはやるべきことはやっていた(2019マドリッド3回戦 vs. バブリンカ レビュー)

2019 Madrid (Masters 1000)
3rd Round
Stan Wawrinka def. Kei Nishikori[6], 6-3,7-6(3)

バブリンカがランキング30位台の実力ではないことは分かっていましたが、それにしても強かったですね。
1ポイント目から全開で、高地の飛ぶ環境を活かして220km/h越のサーブを連発。
フォアもバックも速くコースが厳しく、錦織は面食らってしまいました。

第2ゲームのデュースから2本ミスしてブレイクされてしまいましたが、焦りがあったと思います。
あのバブリンカのショットを見せられたら無理もありませんが、結果として、被ブレイクはこのゲームだけだったので痛かったです。

その後、少々のミスはありつつもキープは頑張りました。ここは非常に良かったと思います。
ずるずる行きませんでした。

ストロークでも深さ、速さ共に負けていたと思います。自滅ではなく、力負けだと思います。
悔しいですが、バブリンカのパワーを認めざるを得ません。

それでも2ndセットは、ラリーに持ち込みさえすれば勝機が見えるというところまでは行きました。

しかしそれでも取れなかった(得たBPは僅か1本)のは、リターン返球率の低さのせいでしょう。
確かに220km/h超えのサーブを返球することは簡単ではありません。
しかし2ndサーブのリターンミスはもったいないですし、もっと深く打つこともできたと思います。
2ndサーブwon 75%を許してしまいました。

タイブレークは、グランドスマッシュのミスとドロップショットのミス(いずれも入れば決まっていた)が痛いという印象が強いと思いますが、フォアハンド攻めていたし、フットワークも積極的に使っていたことは見逃せません。

グランドスマッシュミスのときのポイントは、バブリンカが錦織のウィナー級のフォアを2,3本返してきましたし。
全般的にバブリンカのプレーが素晴らしかったなあ、と。
あれを超えていくためには錦織も錦織の中で上位のプレーをしないといけませんでした。

言いたいことは、錦織は現状の力(決して彼のベストではありません)を使って、やるべきことはやってたなと。
その上で、逆転の機会はしっかり伺っていたと。
BPを握ったときも、TBに入ったときも、「ここを取ってファイナルは先行してやる」と思っていたことでしょう。
ほんとにあともう少しなんだと思います。

気になるのはむしろ技術面で、フォアの浅さ、振られたときのミス、返球の甘さが気になります。
クロスや逆クロスは良くなってきましたが、ストレート系はまだミスが多いです。
また、最後のポイントを取りきるフィニッシュの力(決定力)が他のトップ選手と比べて今、低いと思います。

バックハンドDTLは武器ですが、もう少し確実性が欲しいところです。
リスクがあることを錦織本人もおそらく分かっているので、まずクロスで作ってから球を選びたいという心理が働き、その間に先にストレートへ打たれてしまうパターンが目につきます。

サーブに関しては、確率を少々犠牲にしても「入れば取れるサーブ」を打った方が良いと思います。
今年の1st確率は65%と高いものの、スピードを抑えている印象です。(今日も1stセットは168km/h平均と遅かった)
統計的に錦織の1stサーブ確率と試合の勝率は相関がないことが明らかになっているので(ハモ理論。錦織だけでなく他の選手も同様)、
65%が60%になっても気にする必要はありません。
それで1st wonが2%上がるのであれば、十分に価値がある選択になります。

いろいろあら探しをしたような感じになってしまいましたが・・・。

マスターズ1000やグランドスラムを優勝するというレベルのテニスにはなっていませんが、少しずつ上向いていると思いますし、
今日はあの怒濤の攻めのバブリンカに対し、最後まで向かって行きました。これには頼もしさを感じましたよ。
負けて非常に悔しそうでした。それはすなわち勝つ気十分であったということ。
結果は残念ですが、このままトライを続けていけばいつか良い結果は出ます。

私が臨むのは、試合数が少なくなっている代わりに今一度、体力作りをすること。
リターン時の反応は少し落ちていると思いますし、フットワークは速いですが本来はもっと縦横無尽に動ける選手のはずです。
クレーコートなので動きと体力は非常に重要です。
全仏までまだ時間はあります。やれミスだ、メンタルだと言われてしまいますが、テニスもスポーツなので体が動いてなんぼ。
体が切れていればミスも減ります。精度も上がります。解決策は案外そういうところにあるかもしれません。

113 件のコメント

  • 試合数は3〜8試合と少ないですが、主な選手のモンテ・カルロとマドリードのサービス返球率平均は、
    ナダル    185cm 89%
    メドヴェデフ 198cm 87%
    ズヴェレフ弟 198cm 87%
    ジョコビッチ 188cm 84%
    フォニーニ  178cm 84%
    チチパス   193cm 82%
    フェデラー  185cm 81%
    ワウリンカ  183cm 77%
    ティーム   185cm 75%
    錦織     178cm 67%
    と、リーチの長い選手が良い成績なのは、まあ当たり前と云へば当たり前なんですが、ナダルが大変良い数字で、錦織は最低の部類です。同じ身長のフォニーニが84%なので、錦織でもこの数字は可能だと思うのですが。よく相手のサーブを研究して読むことも大変大事だと思います。今日の試合もリターン率に注目です。

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  • 確かによくない数字で、これをあげないといけないのですが、3試合でうち2試合は負け試合のデータですので、錦織のリターン率が悪いのかどうかはもっと長いデータを見ないといけませんね。

    バブリンカやアルベールのサーブが良かったのは確かなので、もっと返せたかどうかはなかなかデータだけでは判断できない。

    映像見た印象は、サーブも良かってしもっと返せた、の両方ですかね。
    私なスコアが参考になると思います。もったいない、とか凡ミスとか仕方ない、とか書いてますし、セカンドのリターンミスもわかる。

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  • やっぱりサーブのコースの研究が必須じゃないんですかねえ。これまでの検証結果、かなり当たってます。

    正確にいうとファーストセットはデータ通りに来る割合が非常に高い。むしろ過去データ以上にはっきりと傾向が出る。そして、セカンドセットや終盤で変えてくる。でトータルでは落ち着いた数字になる。

    反応できない理由はよくわかりませんが、読みを外されてるというよりは思いきれてないのかも。(推測)
    迷ってどちら側もカバーできてないとか。

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  • リーチが長い選手が「有利とは言えない=リーチの長さとリターン率は相関性がほとんど無い」ということがわかるデータが出たと思います。

    理由は、トップ50には他にも185〜190cm超えの選手はたくさんいます。もしリーチが長い選手が有利なら、長身選手がもっと多数上位になるはずです。
    先にリターン率の上位を出してしまったので、錯覚が生じています。

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  • 錦織のリターン返球率の低さはショッキングですね・・・。
    何かの記事で、全豪で多くのセット数を消費した反省を踏まえてネットプレー含め、攻撃的テニスをする事を課題にしていると読んだのですが、その試みとの関連性があるのでしょうか。
    ポジション下げた上でミスったりもしてるので、違うのかもしれませんが。不慣れなトライアルの中で通常のイージーなボールなどにもミスが出ているのかもしれません。
    今思えば、既に不調へ向けて片足を突っ込んでいた全豪時のリターン返球率も気になるところです。

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  • 禮さんのデータは錦織選手の不調を示していますね。
    ショックでもありますが予想通りでもありました。
    早期敗退(それも初戦で)が続いていることだけではなく、
    ドバイ大会辺りからずっと、
    錦織選手らしくないテニスをしていると感じていました。試合を見ていて違和感さえ感じることも多かったです。
    「それの原因が<リターンがちぐはぐ>ということにあったのか?!」 と。。
    リターンがちぐはぐなのはやはり瞬間的な判断ミスが増えているのかもしれません。
    (このように言ってしまうとネガティブな発言と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれず、書き込むのも躊躇してしまいますが・・。)

    私はむしろこのことから錦織選手の今の状況が把握できて、気持ちが整理できました。
    錦織選手のテニス脳のキレが早く戻って来ますように!

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  • でも、バルセロナの時はリターンよかったですよね?
    アリアシムのサーブに対して深いリターンをして、プレッシャーをかけていたのが印象的でした。
    あれがノーマルな錦織君ですよね?

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  • 皆さま方のデータを駆使した分析は大変参考になります。ありがとうございます。
    さて本日の試合、当然、フリッツ選手としても前回の錦織選手からの敗戦を分析して作戦を練ってくると思います。
    一方で、錦織選手の陣営も、それは百も承知の上で、更なる対応を考えていると思います。
    こうなってくると、実際どうすればよいのか、あまり細かく考え過ぎずに自分の理想とするテニスをひたすら追求すればよいのか、団長さんのプレビューが待たれます。
    ひとつ確実に言えるのは、錦織選手もフリッツ選手も、全仏前のこの大会の試合でひとつでも多く勝つことの重要性を、ものすごく感じているということだと思います。
    応援団のひとりとして、心して応援したいと思います。
    天気がもつといいですね。

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  • 初めまして。こんにちは。
    いつも団長さんの記事、本当にとても興味深く拝見しております。
    皆さんのコメントもいつも楽しみに読ませて頂いております。

    私はリオ五輪で初めてちゃんと圭くんの試合を見てから、圭くんのファンになりました。
    それまでは圭くんの事はニュースで時々目にして、よくわからないけれど、何か凄いんだろうなぁ…と漠然と思っていた程度でした。
    リオでの試合を見て、圭くんのプレーの面白さや何と言っても一生懸命頑張る姿にとても惹かれました。
    モンフィスさんとの激闘や銅メダルをかけたナダルさんとの試合はもう本当に感動して泣いてしまいました。

    最近某動画サイトを見ていて、圭くんが右手首の怪我から戻ってきた時のカップヌードルのCMを目にしました。
    最後の方でサーブを打つ手首のギプスがパラパラと砕け散るのが印象的だったCMです。
    そのCMでの撮影裏話みたいなものが当時日清のサイトに書いてあったのを思い出しました。

    【このCMは、錦織圭選手の実際の練習風景を撮影させてもらいました。本物のプロの練習は、想像した以上に静かで淡々としたものでした。テレビ中継で見る華やかな舞台の裏には、こんなにも地道な練習の積み重ねがあるのかと、改めて思いました。練習後、錦織圭選手に「今の夢はなんですか?」と聞いたら、「グランドスラムで優勝することです。そして世界一のテニスプレイヤーになることです。」と答えてくれました。その瞳は、とても真っ直ぐでした。ぜひ夢を叶えて欲しい。心の底から、そう思いました。】

    これを読んで、私も本当に心の底からその夢を叶えて欲しいなと思いました。
    まだ彼は夢の途中にいます。
    きっと夢が叶うと信じて、これからも全力応援します。
    まずは初戦、頑張って欲しいですね!
    応援頑張ります(^-^)/

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  • ATPの公式のリターンランキングです。
    フィルタをかけるとさまざまな切り口から考察できます。

    やはり、リーチの長さとリターンパフォーマンスには相関がありません。

    錦織選手はトップ10にも入りません。
    予測する力が低下しているのかもしれません。
    また、新しい選手が続々と出てきて対戦回数が少なくなり、読みにくいこともあるかもしれません。

    ジョコビッチはプロのスコアラーがいて、事前に対戦相手全ての詳細な球種やコースなどのデータの統計を取っていることで有名です。
    ジョコビッチ自身は、その全ては見ませんが、分析結果のポイントの報告を受けているそうです。

    先日、TBSで錦織選手はデータを見ることは考えていない、と答えていると流れていました。理由は流れませんでしたが、やはり本能をサポートするデータは大事だと思います。

    https://www.atptour.com/en/stats/leaderboard?boardType=return&timeFrame=52Week&surface=all&versusRank=all&formerNo1=false

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。