錦織圭のテニスを考える(1)

不定期で無計画に錦織圭のテニスについて考えていきたいと思います。これまでのキャリアはどうだったのか、今のテニスはどんな感じでどこが優れていてどこが課題なのか。今後はどうすれば良くてどこに目標があるのか、など。

本当に無計画なのでタイトルも適当、テーマも行き当たりばったりです。

またデリケートなことも、あまり批判を恐れずに書いてみたいと思っています。いろいろな考えや基準をお持ちの全ての読者の方々を満足させることは不可能なので、いろいろ配慮はしつつも私の考えを率直に述べさせてもらいたいと思います。ただし、極力「なぜそう考えるか」を示して論じたいと思います。

とりあえず今日は今年のこれまでの成績について振り返ってみます。

1月:5勝2敗 380ポイント獲得

ブリスベン250 2回戦 20ポイント バグダティスに敗れる
全豪GS 準々決勝 360ポイント マレーに敗れる

バグダティスに敗れたのは痛かったが、GS直前に勝ち進み過ぎて疲労を貯め込んだ経験を活かして全豪直前はエキシビションでの調整。これが功を奏したのか素晴らしい全豪ベスト8入り。

2月:3勝2敗 90ポイント獲得(ほかデ杯で1勝1敗)

デ杯WG1回戦(vsクロアチア) 1勝1敗 カルロビッチに敗れる
ブエノスアイレス250  準々決勝 45ポイント バブリンカに敗れる
アカプルコ500 2回戦 45ポイント シャルディに敗れる

デ杯ではカルロビッチの「生涯最高のプレー」の前に成す術無く敗れる。その後クレーコートの経験を求めて例年とは異なり南米シリーズを選択。勝ち上がり方は良かったが、最終的には期待された成果は残せなかった。

3月:2勝2敗 100ポイント獲得

インディアンウェルズ1000 2回戦(緒戦) 10ポイント ヒラルドに敗れる
マイアミ1000 4回戦 90ポイント ナダルに敗れる

IWでは過去2勝しているヒラルドに雪辱を許し、痛い緒戦負け。クレーからハードへの切り替えと、IW特有の朝夜の寒暖差、強い風と相性が悪そう。マイアミではナダルに善戦し手応えをつかむ。

4月:4勝2敗 180ポイント獲得

モンテカルロ1000 3回戦 90ポイント ベルディヒに敗れる
バルセロナ500 準々決勝 90ポイント ベルダスコに敗れる(棄権)

モンテカルロでは素晴らしいクレーテニスを披露。ベルディヒを一時圧倒するも逆転を喫す。
バルセロナでも順調に勝ち上がったがまさかの脇腹故障で無念の棄権。

5月:試合なし

脇腹の故障のため戦線離脱。

6月:2勝1敗 90ポイント獲得

ウィンブルドンGS 3回戦 90ポイント デルポトロに敗れる

約2か月の戦線離脱からいきなりウィンブルドン出場となり、状態が不安視されたがしっかり3回戦まで勝ち上がる。デルポトロには通用しなかったが復帰戦としては上出来の結果。

7月:7勝3敗 90ポイント獲得

ニューポート250 準々決勝 45ポイント ラムに敗れる
アトランタ250 準々決勝 45ポイント 添田に敗れる
ロンドンオリンピック 準々決勝 135ポイント デルポトロに敗れる

オリンピック前は期待されながら2大会とも敗れてはいけない相手に敗れる。両試合とも相手の出来は素晴らしく、負けに関しては致し方ない面はあったが、ストレートで敗れており負け方が気になった。

オリンピックでは若手のライバルトミッチ、ベテランのダビデンコ、そしてフェレールとぜひとも勝ちたい相手に勝ち続けてのベスト8は立派。デルポトロには再び敗北を喫したが内容も良かった。

8月:2勝2敗 100ポイント獲得

トロント1000 2回戦(緒戦) 10ポイント クエリーに敗れる
シンシナティ1000 3回戦 90ポイント バブリンカに敗れる

トロントの負けは悪条件も重なり致し方ない。バブリンカも強かったが、いつかはこういう対戦も乗り越えて勝っていかなければならない。

気付き事項・感想など

こうして見てみると、コンスタントには勝っています。14大会(デ杯除く)に出場して初戦敗退が2回。そして全豪含め6回も準々決勝に進出しています。

反面ベスト4以上がなく、爆発力が足りないことがなんとなく物足りなく感じる人が多い原因になっていると思います(個人的にはそんなに物足りなくはないですが)。

また、これまで勝ってきた相手に負けてしまったり(シャルディ、ヒラルド)、相性が悪い(と思われている)相手に引き続き負けたり(バグダティス、バブリンカ、デルポトロ、マレー・・・ただしどちらかというとこれらの選手は「単純に強い」)していることがその印象に拍車をかけています。

ランキング10位台の選手ですので、25〜30位相当の成績しか残せていない今年のこれまでの状況を見て、「期待を下回っている」と感じても無理はないと思います。

事実、このブログにいただくコメントも今年は厳しめで、ファンの期待の高さを伺わせるものとなっています。

ただ私の印象は少し違っていて、確かに勝って欲しい試合で負けてしまって残念に思ったことは結構あるのですが、テニスの内容については長い目で見て進化していると思うのです。

特にマイアミのナダル戦、モンテカルロのベルディヒ戦などは負け試合ながらも着実な進化と可能性を感じさせるものでした。

この「可能性を感じさせる」というのは非常に重要な部分で、例えば皆さんは全仏で伊藤竜馬がマレー相手に見せた「可能性」をよく覚えていらっしゃるのではないでしょうか。

あの試合、スコアとしては竜馬の惨敗です。勝負という意味では勝負になってないと言えるでしょう。

しかし第2セットでマレー相手にストロークエースを連発した竜馬のテニスは紛れもなく「可能性を感じさせる」もので本人、ファンともに手応えを感じたのではないでしょうか。あんなスコア(笑)であれだけ楽しめて満足できることはそうあるものではありませんw

錦織の場合、今年は調子に波がある感じがしますし、他の選手のマークもきつくなってきたこともあります。

それに何より調子が上がってきたところでの脇腹の故障が大きく影響している感じです。

特にサーブに対する影響が大きいようで、サーブの波がテニス全体の波と一致しているような印象を受けます。

サービスのスタッツを確認してみるとやはり悪く、リターンゲームでの高い獲得率によって成績を維持している感じです。今後の浮上の鍵はやはりサーブが握っていると言って良いと思います。

統計的なゆらぎも印象に影響を与えています。

錦織と言えば逆転、そしてタイブレークの高い勝率という印象ですが今年は逆転できずあっさりとストレートで負けてしまう試合、タイブレークを落とす試合が目に付きます。

しかしこれが普通だと思います。

タイブレーク10何連勝とかは単なる統計上のアヤです。タイブレークの勝率派6割もあればはっきりい言って「もの凄い」レベルですから、10連勝以上はいくら勝負強くても狙って達成できる者ではありません。(ただし勝ち続けていく事によるメンタル的な好循環というものはあります)

逆転にしたって、サービスゲーム絶対優位というテニス自体のゲーム構造があるわけですからいくら錦織が頑張ったところで相手も同様に頑張れば逆転できません。まずはリードを許さないことが重要なのです。

ファイナルセットに入ったときの勝率の高さは相変わらず驚異的と言っていい数字を残しており、これは明らかに錦織の勝負強さを示していると思います。

これは何回も言っていますが普通の選手に真似できることではなく、これだけでも錦織が類い希なプレイヤーである根拠になり得ます。

昨年の今頃の話題は「修造越えできるかどうか」だったわけですからそれと比べたら進歩しているのはあきらか、テニスの内容も波はあるものの明らかに安定感が増していますから、私はそれほど心配していません(ただしサーブについては少し心配w)。あとは錦織がそれに対してどれだけ自信を持っているかですね。自分の力を信じて欲しいと思います。

17 件のコメント

  • こうやって、まとめてもらうと、今年の対戦の復習できます。
    ありがとうございます。
    そっか。あの選手に負けたよね・・・とか、あぁ、あの試合ね・・なんて思いだします。
    コンスタントにポイントはとっているんですよね。(5月はのぞく)、でも爆発してないのかぁ・・・。
    勝ち続ける難しさ、順位をキープするのって本当に大変なんですね。

    でも錦織圭の魅力はランキングだけじゃないんですよね。あのプレースタイルが魅力だったりするわけで、魅せるテニスができる錦織圭はやはり好きだなぁ・・・。

    私の通ってるテニスクラブでも”カイ ニシコォ~リ”の名が知れ渡るようになってきました。
    USオープンで、もう1回爆発期待!!

      引用  返信

  • 去年の全米は、1回戦敗退(棄権)してたんですね。今回は大丈夫ですね、去年と比べると相当進化していますね。本当に!
    あと一にサービス二にサービス、三,四がなくて五にサーブです。
    何よりもサーブが確立したら、もっともっと強くなりますよね、8月12日よりブログの更新がありませんけど、練習に忙しいんでしょうか。
    ちょっと心配です。もうすぐUSオープン、楽しみで楽しみで仕方ありません。がんばって!!!!

      引用  返信

  • 全く同感です。
    人間どんどん贅沢になって次々と未知なる領域に対して好奇心を抱くもの。ただしそれが進化の原動力となるので必ずしも悪いことではないと思います。
    我々は応援することしかできませんが、それも錦織選手の糧となると信じています。
    我々には行けない厳しい世界に身を置いて、置くことができて、羨ましくもあり・・・
    恵まれた才能を今後も伸ばせて行けるよう、しっかり応援していきたいと思います。
    ガンバレ、Kei !

      引用  返信

  • Reiko in Floridaさん、ランキングはあがってきたのに最近は、ATPのホームページでもあまり取り上げられることがなくなったような気がしますが、周りの方がカイ・ニシコリに注目してくれるなんて嬉しいのですね、やはりプレイスタイルが魅力なのかしら

      引用  返信

  • いつも楽しく拝見しています。
    大きな期待を背負いこみ、いつも批判を受けているイメージがありますが、纏めてもらうとやはり一流の結果を残しているんですね。僕は、例えば決まらない錦織のドロップを見て、「決まらないんだからやめろっちゅうのに」といつもぼやいていますが、本人は未完成織り込み済みで、そんな近くない、中長期的な将来の自分のプレー像を見据えながらチャレンジしているのかもしれない、と思いました。ドロップは例で様々な事を。
    それを、練習ではなく、結果を求められるツアーでやることは並大抵の事ではないと思います。
    まとめ記事を読んで、ふとそんな風に感じました。

      引用  返信

  • とりあえずフェレールくらい体ムキムキにお願いします。あと2まわりくらいムキムキで。

      引用  返信

  • みなさんコメントどうもありがとうございます。

    ドロップは・・・やっぱりもうちょっとがんばってほしいなw

      引用  返信

  • 人間はどうしても目先のことで
    一喜一憂してしまうので、
    こんな風に、全体を眺めることって大切ですよね。
    団長さん、いつもありがとうございます。
    以前、森田あゆみのコーチが
    「今すぐ使えるワザ(戦術)と
    今はまだ使いこなす技術、体力が伴わず無理だけれど
    将来的に是非必要なワザと、その両方を
    練習し続けなければならないし
    そのバランスがむずかしい」みたいなこと書いている記事を
    読みました。
    試合自体が将来のための練習の場でもあったりするわけで
    プレイヤーって本当に大変ですね。
    全仏前のwowowの番組で土橋さんが興奮(?)してた
    「この早いタイミングの打ち方は今まであまり見たことない」
    (バブリンカが反応できなかったやつ)というショットも
    その後、結構試合で見かけるような気がするし
    全豪でマレーが上手だった、ラインぎりぎりの球を下がらず
    ライジング気味に打ったりするのも
    最近、お、圭くんもちょっとトライした?って場面を見かけます。
    これから、もっともっとうまくなりますよね!
    ドロップは、「どうだ!?」って負けん気というか、魅せたい気でやって
    やっぱり失敗ってのが多いかなぁ・・・

      引用  返信

  • 「昨年の今頃の話題は「修造越えできるかどうか」だったわけですからそれと比べたら進歩しているのはあきらか、」
    そうですよ。隔世の感があります。
    きっと来年の今ごろは、GS8強くらいでは爆発と呼ばなくなっていることでしょう。
    それくらいの変化が錦織の立場にも、ファンの期待にもこの1年で起こったということではないでしょうか。

      引用  返信

  • 団長の分析力にはいつも感服します 圭ファンとしてみなさんやはり同じこと感じてるんですね~ 最近の圭のドロップショットヒヤヒヤですもん  でも実は初優勝したときの対ブレーク戦のドロップショットみて圭にはまってしまったんです!あの時アメリカ人の実況者感嘆の雄たけびあげてましたよ なんて18才だと!!あれではまってしまったんですよ~!!待ってました!クールで天才肌の日本人選手! 私はやはり去年の圭より攻撃的な今年の圭が良いですね 躍動感が18才の圭に近いですもん!今年に入ってのトンガ戦、ベルディヒ戦、フェレール戦なんか大変非凡かつ天才的な爆発力感じます 良いとこ取りしてしまうといつか4大大会の日本人初チャンピョンの夢観られそうな気がするのですが・・・

      引用  返信

  • 気のせいかもしれませんが、脇腹故障前より、若干サーブのコースが甘くなってるような。
    その分、セカンドを叩かれ、それを避けようとして入れにいったファーストでもポイントを取れないという悪循環に嵌ったとき、負けるケースが多い気がします。
    フォーム含め、このあたりの修正ができれば、スピードはさほど上がらなくても楽にキープできるようになるんじゃないでしょうか(200キロ以上のサーブが打てることは証明済)。
    ストロークは今でも充分トップクラスですからね。
    以上、素人評論家の超主観に基づく分析でした。

      引用  返信

  • U S open Kei は17シード決まりましたね、初戦の相手誰になるのか?この時期総括ありがとう御座います。ついつい一喜一憂しまいがちですが、「修造越え・・」今誰も言いませんものね。
    他のプレイヤーのゲームを冷静に観戦していると、判りますね、ここと言う処でサーヴィスを決める!!Kei 今US open に向け厳しいトレーニングをしているとの事サーヴィスに磨きが掛かればいいですね。

      引用  返信

  • 錦織選手はサービスが課題とよく話題になりますね。

    多くの選手はサービスの動作に入る際、スロート部に左手を添えて利き腕を脱力させ始動しますよね(右利きの場合)。一方、錦織選手は始動の際、左手でラケットを支えないフォームなので、構えの時から常に力が入り負荷が掛かっているように見えるのは私だけでしょうか?

      引用  返信

  • 7月が3勝2敗とありますが、7勝3敗ではないでしょうか?
    間違っていたらすみません。

      引用  返信

  • 的確な分析にいつも感動させられます。
    個人的にはサーブの力というのはもう少し経験をつめば上がってくるのではないかと期待しています。(特に根拠ないですが)
    それよりも錦織選手のリターン力を心配しています。ワウリンカ戦は相手が良すぎたにせよ、サーブ力のある選手に苦戦している印象があります。ウインブルドンでナダルが負けたようにビッグサーバーが早いコートで爆発した場合は仕方ないにせよ、ランク近い選手や上の選手のここぞのポイントで相手にサービスポイントを献上しているような気がします。(相手がここぞのときにいいサーブを残しているということも当然あると思いますが。。。)
    ATPのHPで確認しましたらファーストサーブリターンポイント率は33%ということで、他の選手に比べてそれほど悪いわけではないですし、ツォンガやロデックに勝ったりもしてますので、個人の勘違いかもしれないのですが。
    いずれにしてもまだまだ伸びしろあると思いますので、全米オープン含めた今後の活躍に期待です。

      引用  返信

  • 圭は、1段1段、着実に階段を登って行くタイプなんですね!!(;^_^A
    プレイスタイルや試合のまくり方が派手だから、ぱぱっと何でも出来て浮き沈みの激しい天才タイプかと思っていたけど、どうもじっくり構えるタイプのようです。
    左右に振られた時の踏ん張りに、その後の切り返しのショットに、圭の着実な成長がしっかり見てとれます。
    でも、ビッグ4と比べたらまだまだです(;^_^A
    サーブなんて、足元にも及びません。
    それって当たり前ですよね(=゜ω゜)ノ
    互角なら、今頃圭はNo.5ですよ(‘-^*)ok
    のびしろがたくさんある、そのことに、私は胸がトキメキます(≧∀≦)
    暗黒の時代を知る者にとって、圭の魅せてくれている夢はとてつもないことです(*^.^*)
    でも、まだ夢の続きだよね(‘-^*)ok

      引用  返信

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

    ABOUTこの記事をかいた人

     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。