遅ればせながらウィンブルドン決勝レビュー:今のナダルを倒すのは至難の業

ウィンブルドン決勝はナダルのストレート勝ちで終わりました。

The Championships Wimbledon 2010
Men’ s Singles Final
Rafael Nadal
def. Thomas Berdych, 6-3,7-5,6-4

ナダルのストレート勝ちで、勝負という意味ではナダルの完勝でしたが、プレーの内容としてはベルディヒも決して悪くありませんでした。

しかし各セット中盤から終盤にかけてきっちりブレイクしてくるナダルが一枚上手でした。

今大会のベルディヒの活躍は素晴らしく、フェデラー、ジョコビッチを破っての決勝進出は、「精神的に弱い」というレッテルを覆すに十分なものでした。

しかしそれでも優勝するためには、さらに「イッちゃった」精神状態になることが必要だったと思います。特にナダルに対しては。

テニスはメンタルスポーツだとよく言われます。私も試合中に自分を見失ってあり得ないまずいプレーをすることがありますし、確かにメンタルはプレーを左右します。

しかし同時にメンタルは「技術」であるとも思います。すなわち、トレーニングで強化可能なものです。

発言内容や仕草、表情などを見るとベルディヒが穏やかな性格の好青年であることは容易に分かりますが、これまではそれがテニスにあまり良い影響を及ぼしていなかったように思います。

どういうトレーニングを積み、どういう覚悟で試合に臨んだかは分かりませんが、ベルディヒの全仏、ウィンブルドンでのプレーぶりは過去のものではありませんでした。

成功体験を積み重ねることによって好循環を生まれたように見えました。すなわち、全仏での好成績がサーフェスの違いというハードルを乗り越えてウィンブルドンでの再ブレイクを促したと考えることができます。

最終的には全仏ではソダーリングに競り負け、ウィンブルドンではナダルにきっちり勝負所を取られて敗退してしまったわけですが、これまでのような明らかな自滅ではなく、(やや硬くなった部分はあるにせよ)貪欲に勝ちに行く姿勢は以前とは大きく異なりました。開き直ったのか、自分を客観的に見れるようになったのか、あるいは自信がついたのか、いずれにせよベルディヒは「メンタルの技術」を身につけたのだと思います。

100%克服したとは見えませんので、また弱気の虫が出てくることもあるかもしれませんが、今年の活躍を思い出すことができればこれからも強さを発揮できると思います。

ナダルはこれはもう、現時点での最強選手であることは間違いありませんね。

心・技・体どれも穴がありません。

プレーぶりもずいぶん攻撃的になりました。特にサーブの威力が大きく増しました。

とにかく体が切れてよく動くので(「体」)、気持ちも積極的に行けるし(「心」)ショットのブレが小さくなります(「技」)。一番心配なのはやはり膝の状態でしょう。

クレーのイメージが強いナダルですが、ウィンブルドンでも2009年の欠場を除くと、これで4回連続の決勝進出です(2回優勝)。なぜクレーキングのナダルがウィンブルドンでも強いのかについては別の機会で考察してみたいと思いますが、全仏でピークに持って行き、毎回その状態をウィンブルドンまでキープできていることがひとつの要因だと思います。

年の後半はそれまでの連戦につぐ連戦の疲れ、あるいは故障により比較的成績が振るわないのがこれまでのナダルに見られるパターンでした。昨年はここ数年で最も膝が深刻な状態でした。ハードコートでは(比較的)勝てないと思われていますが、コートの相性というよりはコンディションの要因が大きいと思います。今年、ガス欠にならず故障も悪くならなければ、USオープンも狙えると思います。

しかし今回の錦織はナダルと1回戦で当たってつくづく不運でした(T T)。

でも錦織に勝った選手が優勝したわけですから、ファンとしても少しはなぐさめになります。またナダルに通用するテニスをすれば即、ツアーでも通用すると言っていいと思われるので、1回戦のプレー内容からも引き続き活躍が期待ができる状況だと思います。

夏のハードコートシーズンが待ち遠しいです。

フェデラー、マレーについて

準々決勝で敗退したフェデラーに対して世界中から心配の声が上がっているようです。しかし私は先日述べたように、それほど悲観的な状態ではないと思っています。

最近の不調(フェデラーにしては)が「衰えの始まり」である可能性は否定はできませんが、「調子が悪いだけ」という可能性もまた否定できないでしょう。

年初のころのナダルに対する評価を思い出して下さい。復活できるかどうか大変心配されていましたし、もう終わったとすら言われていました。それが今はどうでしょうか。

同じようなことは昨年のフェデラーにも言われていました。全豪でナダルに敗れ、完全に水を開けられた印象でしたが全仏、ウィンブルドンと連続でGSを獲得しました。

絶対とは言い切れませんが、同じことが起こっても少しも驚きません。

フェデラーの実力MAXを100として、今が仮に80くらいだとします。そしてフェデラーに勝ったソダーリング、ベルディヒも80くらいで、キャリア最高の状態だとしましょう(仮の話ですよ、数字は適当です。)

この実力80の3人が実力100になる可能性を考える時、一度でも100になったことがあるフェデラーと、100になったことがない残りの2人ではどっちが100になる可能性が高いでしょうか?

人間は直近の傾向が今後も続く可能性を過大評価する傾向があります。

もちろん傾向が続く可能性も大きいのですが、巻き戻しがあっても何らおかしくないことも正当に評価したいものです。

マレーですが、ここ2年くらいのプレーぶりを見ていてチャンピオンの資質は十分にあると思います。フェデラー、ナダルが圧倒的だったので後塵を拝していますが、ビッグポイントでの勝負強さ、技術レベルとフィジカルの向上、戦術、ショット選択どれをとっても一流です。年齢もまだ若く、心配しなくてもチャンスはまた近いうちに巡ってくると思います。それがウィンブルドンだったらいいですね。

添田豪、ニューポート1回戦突破!

添田豪がニューポートで行われているATP250の大会で、テイラー・デントをフルセットの末下して2回戦に進出しました。

当初、予選からの出場を予定していましたが欠場者が多くでて本戦INになりました。

チャレンジャーを主体にツアーを回っている添田がツアーで勝利を挙げるのは約2年ぶり(2008年北京以来)のことです。USオープン本戦ダイレクトインが近づいてきました。

2回戦もがんばれ!

7 件のコメント

  • 添田さんの試合、ライストで観てました。
    積極的にS&Vをやっていたのがよかったと思います。
    終盤のピンチに耐えて勝ちきったのが今までと違います!
    まさしく「メンタルの技術」を身に着けつつあるのでは。これから楽しみです。

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  • ナダルは今年から大会数をうまくセーブしはじめてますし、USOシリーズもうまく回ればUSO期待大ですね。

    添田君に関しては驚きました!
    好調を維持してるとは思ってましたが、
    これはいよいよ実力が上がりましたかね?
    コーチがサンギネッティになったのも大きかったと思います。

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  • 団長!
    USオープン楽しみですね!!!
    WBはいろんな試合やハプニングがありましたね。
    全米も期待しちゃいますねーーーー:D

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  • ビランデル、クーリエあたりは、24歳くらいから

    成績が下降していきましたが

    ナダルの強さはいつまで続くのだろうか。気になります。

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  • 衰え始める時期は人それぞれなのでなんとも言えませんが、ナダルの場合まだまだ心配は無用に思えます。てか元気すぎでしょう!

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  • ナダルもよくフルセット2回くぐりぬけてきたと思います。準決勝、決勝は完璧でしたね。ところで昨年の1月でしたか、怪我直前に圭君はベルディヒに勝ってますね。あんときゃベルディヒが頭抱えちゃうシーンもありました。今回圭君とベルディヒのナダルに負けたスコアが大体似ています。まあ一回戦と決勝じゃ比較しても意味ないけど…。

    さて、フェデラーですがソダーリングに全仏で負け、ベルディヒにWBで負け、こないだ久々にヒューイットにも負けちゃって、今シーズン全豪しか優勝がありません。ファンとしては心配です。でも、問題は怪我とモティベーションでしょう。勝利に貪欲な姿勢さえ失わなければまだまだトップにいられるのではないでしょうか?

    今後はナダル、ジョコビッチ、マレー、フェデラーにソーデリング、ベルディヒ、ダビデンコ、デルポトロなどが団子状態になって、その中に圭君が絡んでくる…といいなあ。

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  • 決勝戦、ベルディヒの強さとラファの強さの差がどれくらいあるのか
    お互いが戦ってきた相手からは想像できませんでした。
    思いのほか、スコア的にはラファの完勝でしたが、ベルディヒガもう少しショットの精度を増し、もう少し自信をつけてしまえば、あのような展開にはならないでしょう。

    マレー・ラファ戦は本当に中味の濃い、いい試合でした。ぎゅっと凝縮された技と、ガチンコのメンタル合戦。
    面白かったなぁ。

    フェデラーは、私も復活すると思います。
    全米で、完全な復調を遂げて、決勝戦まで上がってきて欲しい。

    ラファはその自信と、試合中はいつなんどきでも絶対に手を抜かない=1Gも手を抜かず1ショットも手を抜かず勝負してくるところに、その強さがあると思います。試合時間が読めない、といった話をしたときに、確か「テニスはポイントの積み重ねだから」といわれましたが、1ポイント1ポイントを積み重ねていくコツコツ度がナダルの強さたる所以だと私は思います。

    全米、我らがにしこりは、またどんな感じで現れるのでしょう。
    にしこりの試合は、脳の活性化に最適です。
    いろいろな意味で全米がまた楽しみになりました。

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。