ラケットに関する3種類の「重さ」(テニスの物理)

昨日、ラケット選びの際の重さについての考え方について述べましたので、今日はラケットの3種類の「重さ」について簡単にお話しします。

その前に、昨日は重さに関する指針として、「腕力の許す限り重い方がいい」と述べましたが、これはあくまで一般論ですので、腕力がある人でも軽いラケットを好む人がいることを付け加えておきます。

万能のラケットなど存在せず、何かを重視すれば何かを犠牲にせざるを得ませんので、軽いラケットのアドバンテージである、

  • 速いスイングスピードが可能
  • ラケットの取り回しの容易さ
  • ラケットを意図した位置に正確にセットしやすい(追加)
  • 疲れにくい

といった特性がデメリットを上回ると判断すれば、軽いラケットでもいいのです。

ただ、一般的な話として、重いラケットの欠点は腕力があれば問題とならない場合が多いので、「腕力の許す限り重いラケット」を推奨させていただいた次第です。

話を戻します。

「ラケットの重さ」と言うとき、実はそれは1つではありません。3つあります(細かいことを言えば、もっとありますが今日は省略)。

まず最初はラケットの「重量」そのものです。これは当たり前ですね。

300gのラケットはどう測っても300gです。ラケットを「立てて」持てば、300gのラケットならどんなラケットも、同じ重さに感じます。

2番目はラケットを「寝かせて」持った時の重さです。この場合、同じ300gのラケットでも、ラケットの重心の位置が異なれば、重く感じたり軽く感じたりします。

ラケットの重心の位置は通常「バランスポイント」と呼ばれ、ラケットのグリップエンドからの距離で表現されます。

カタログやラケットの内側などに、310mmとか340mmとか書いてあります。

参考にウィルソンのホームページより、現行モデルの重量とバランスポイントを列挙してみます。

NANO PRO 278g、345mm
[K]FOUR FX 264g、340mm
[K]OBRA TEAM FX 100 299g、315mm
[K]OBRA TOUR 100 309g、310mm
[K]ONE FX 122 249g、372mm
[K]PS 88 349g、315mm
[K]RUSH FX 280g、330mm
[K]STRIKE 102 255、337mm
[K]THREE FX 115 253、365mm
[K]TOUR LITE 102 249g、330mm

重量もバランスポイントも様々であることが分かっていただけると思います。 バランスポイントに関する私のイメージは

310mm~315mm トップライト
320mm前後 ノーマル
330mm前後 ややトップヘビー
345mm~ トップヘビー
360mm~ 超トップヘビー

という感じです。

「何mmから何mmがトップライト」とかは決まっていませんので、大体のイメージです。感じ方は人によって異なります。

例えば330mmのバランスポイントのラケットを完全にトップヘビーだと感じる人もいるでしょうし、ノーマルだと感じる人もいます。あくまで目安として捉えてください。

ちょっと話がそれましたが、この「重量+バランスポイント」の組み合わせによって、ラケットを水平に持ったときに感じる重さが決まります。

重量が軽くても、トップヘビーだと持ったときに意外と重く感じます。

3つ目は「スイングウエイト」であり、これが一番重要な「重さ」です。

スイングウエイトは簡単に言えば、「振ったときに感じる重さ」です。

同じ重量、同じバランスポイント持ったラケットでも、重量の配分が違えばスイングしたときに感じる重さは異なります。

例えば、300gのラケットに対し、

  1. その300gがバランスポイントの1点に集中している場合
  2. 150gがラケットの先端に、残り150gがラケットの根元にある場合

の2つの場合を想定します。実際にはこんな重量配分のラケットは存在しませんが、分かりやすい例として。
「先端」と「根元」はバランスポイントから等距離にあるとします。

この場合、2つのラケットは重量もバランスポイントも同じですが、2の方がスイングウェイトは大きくなります(振る時に感じる重さは大きくなります)。

それは、スイングウエイトが、グリップを握る位置からの距離の2乗に比例するからです。

すいません、分かりづらくて・・・図を描けばもう少し分かりやすいのですが。

実際のプレーでは、ラケットは「スイングされてナンボ」ですので、このスイングウエイトがラケットの性能を左右すると言っても過言ではありません。

それにも関らず、ラケットのスイングウエイトは、カタログのどこを見ても掲載されていません。

これが、ラケット選びの難しさの一因だと私は思っています。

同様に、ラケットの性能を左右する重要な特性である、フレームの剛性についても、普通は数値が掲載されていません。

ショップの店員さんに聞いても、まず知らないでしょうし、下手をすればメーカーに問い合わせても出てこないかもしれません。把握している人はごくわずかなのではないでしょうか。

このブログでは何度も言っていますが、

ラケットの重量とその配分、フレームの剛性が決まれば、そのラケットの特性はほぼ決定される

のに、これらの数値が入手不可能だとすれば、テニス愛好家はどうやって無数にあるモデルの中からラケットを選べばよいのでしょうw。

もちろん試打することが基本となるでしょうが、複数のラケットを、複数のテンションで同時に打ち比べない限り、本当の意味で違いは分からないと思います。あとは、そのラケットが信頼できるかどうか、その一点に尽きます。はっきり言って心理学の世界だと思いますw

曖昧で実体が掴みづらい「フィーリング」や「打球感」と言ったものより、これらの数値の方が私は信頼できるので、いつかはカタログのスペック表にスイングウェイトやフレームの剛性が記される時代が来ればいいな、と切に願っています(実現しないでしょうが・・・)。

ゴルフクラブのカタログにはスイングウエイトは記載されているんですがね・・・。

最後に、スイングウエイトは実は、機械で計測できますし、楽天市場等でも売っていることを確認しました。15万円以上しますが・・・。

スイングウエイト計測機の例(GOSEN GM31) 151,200円也。
(クリックすると詳細が見れます)

もし行きつけのショップにこういった機械が置いてあったら、是非、使わせてもらいましょう!

14 件のコメント

  • 計測器まであるのに浸透していないのはどうしてなんでしょうかね。
    所定の範囲に収めるのが難しいんでしょうか? ガットの重さで変わってしまうから?
    カタログ記載されればラケット選び(絞り込み)が楽になると思います。共通の定義(規格)などができて浸透すれば良いなぁ。

      引用  返信

  • C太郎さん

    ずばり、需要がないからですwww

    そもそもスイングウエイトのことは知らない人が多いし、知っても気にしないというのが現状だと思います。

      引用  返信

  • スイングウエイトについて、
    「スイングウエイトが、グリップを握る位置からの距離の2乗に比例するからです」
    ということですが、グリップを握る位置からどこまでの距離の2乗なのでしょうか。
    最近、頭を使ってなくて、もともと乏しい理解力がさらに低下していまして…。
    スイングウエイトに関して、もう少し説明をお願いします。

      引用  返信

  • ご存知かもしれませんが、Tennis Warehouseのウェブサイトには、市販中のラケットのスイングウェイトの数字が掲載されています。http://www.tennis-warehouse.com/(英語ですが)。このサイトには、ラケットのパワーマップ(どの部分がどの程度の反発力があるか)も載っていて大変参考になります。最後はやっぱりデモしてみるしかないですが、その前のスクリーニングに役に立ちます。

      引用  返信

  • はじめまして
    ブログにこめんとされていたので書き込ませてください。

    このお店のことで困っています。
    ラベイユ(フレンチ・市ヶ谷)
    http://kagurazaka.seesaa.net/article/41363786.html
    住所:千代田区九段南3-8-2 ライオンズマンション1F
    電話:03-3230-2580

    写真でわかると思いますが、
    路上に店頭にいすと看板を置いて通行の邪魔になっているんです。

    いつも歩道いっぱいにふさいでいます。

    写真右手にあるごみ置き場に行くのにほんとうにじゃまです。
    この店の前のテナントはこんな非常識なことをしてなかったんですけどね。 撤去するようにお願いしても完全無視なんです。
    自分が法律に反していることも迷惑かけていることも
    まったく自覚がないようです。

    店の人は、役所でも警察でもかってに電話してくださいと言いました。
    うちのほうで、役所と話しますからと。

    お店選びもこういうことも考えてもらえないでしょうか。

    よろしくお願いします。

      引用  返信

  • 匿名さん

    すいません、意味が分かりません。

    Nosaさん

    ラケット上のある一点における、グリップを握る位置からの距離です。

    Canuckさん

    TennisWareHouseは知っていましたが、スイングウエイトまで記載されているとは知りませんでした。ありがとうございます。
    USモデルと日本モデルでは違いがあることも多いのですが、参考にはなりそうです。

      引用  返信

  • たぶんカタログに表示されないのは、同じラケットの同じウエイトクラス(ライトとかスーパーライトとか)でもウエイト、バランスが固体によってバラツキがありそれによってスイングウェイトが変わってくるからだと思いますよ。実際には少し大きめの専門店ならスイングウェイトを計る機械を置いてありますから、買う際に同じラケットを何本か計測してもらって大きい方か小さい方を好みでチョイスすればいいと思います。
    ハッキリ言うと無きゃ無いで同じモデルだったらそういうものだと思えばいいだけです。

    モデルごとにスイングウェイトを知りたければネットでショップのサイトを探してみるのが早いと思います。
    私がよく参考にするのは(買ったことはないですがw)「コートサイド」というショップのサイトです。ここはラケットごとのスペックとインプレッションも書いてあるので参考にはなります。(ただしインプレに関しては個人の感覚なのであまり鵜呑みにすることはしません)

      引用  返信

  • 以前、国内ラケットメーカーの製造ラインの紹介映像で、各々のグリップに重さの違うオモリを入れていたシーンがありました。
    一応、総重量やバランスは公表していますが、それは平均値で、わざと少しずつ違わせてユーザーの好みで選べるようにしているんでしょうね。
    (だから、通信販売で買うことは考えられません)
    それだけが要因かどうか分かりませんが、グリップ2と3では明らかに3のほうが重い個体が多いですしね。

    私は昔、重さは好みの2を何本か買って、新宿のエディーで3とか4にしてもらっていた事があります。
    元のグリップを削り落とし、新しく樹脂を加熱して成型しなおしてくれるんです。
    そのときはサイズのほかにウイルソン型、プリンス型、ヘッド型(扁平)という形状も選べました。
    また、SWは忘れましたが、総重量やバランスもできる範囲で調整してくれました。
    グリップ関連か、上記一連の作業を「RA・TEST」と呼んでいたような気がしますが、今でもやっているのかなぁ?

    あっ、それとラケットはやはりブレード構造がいいですね。
    軽く作れないのが難点のようですが、球乗りが違います。
    今、私が使っているのはスラセン・プロブレードで、団長が前に使っていたスパイデックス(安くて良いマルチ)を張ってます。
    ただ、そろそろ腰が抜けてきたようです。

    あ~、アスタリスク98とXブレード・フォースを試打してみたい~~、くっ・・

      引用  返信

  • 訂正;上記の「新宿のエディー」は「渋谷」の間違いでした。
    また、当時よりさらに調整のレパートリーを広げているようです。
    やっぱり、GJは栄えるようですね~

      引用  返信

  • さすが島さん、当ブログの蘊蓄四天王の一人!
    って、残り3人は誰だ!?

    スパイデックスはいいガットですね。

    ラ・テストありました。たぶん合ってます。
    グリップに重りを入れるのは、たぶん重量とバランス調整のためだと思います。
    製造誤差がどうしても出るので、スペック内に収めるためだと思います。

    つまり!

    重さとバランスがスペック内でも、スイングウエイトが全然違うラケットが流通しているということではないでしょうかね!

    ・・・って、私通販で買ったりしてますが・・・。どうせ鉛で調整するので・・・。

      引用  返信

  • たなーさん

    コートサイドはマニアックで蘊蓄系のショップなので私もメルマガを購読したりしています。いいですよね。
    私も買ったことないですが・・・。

      引用  返信

  • 団長、お晩です。
    含蓄系認定、ありがとうございますw
    う~ん、メーカーがわざと重さとバランスにバラエティーを持たせて出荷している、というのは私の思い過ごしかな~~

    それはともかく、不思議なのは新しいラケットがどうも気に入らないので好きだった古いラケットどおりの重さとバランスに手作業レベルで調整しても、振った感じが同じにはならないことなんですよ。
    (どういうわけか、はかりで合わせているのに手で持ったときの重さまで違うように感じます)
    重さとバランスが同じなのだからSWも同じになるはずで、あとは材質や構造、形状を要因とする打球感や飛びが違うだけのラケットが出来上がるはずじゃないですか???
    同じことを言った友人もいました。

    団長、これはどう思われます?
    かくして何度、半額以下で委託販売するはめになったことやら・・・(泣き)

      引用  返信

  • 毎回すいません、ガンチクじゃなくてウンチク(蘊蓄)だったんですね。
    失礼しました・・

      引用  返信

  • 島さん

    いえ、含蓄でもありますもちろんw

    >重さとバランスが同じなのだからSWも同じになるはずで、あとは材質や構造、形状を要因とする打球感や飛びが違うだけのラケットが出来上がるはずじゃないですか???
    同じことを言った友人もいました。

    これ、同感です。
    昨日、まったく同じことを思いました。
    重量スペック上はほぼ同じになるはずの2つのラケットの打ち味が違うんですよね。
    厳密なことを言うと、重りをつけて重くした方が、サイドに重量がやや集中しているので面ブレに対する安定性はあるとは思うんですが、それとて大きな差になるとは思えないし。

    不思議です。理由はよく分かりません。
    ラケットの剛性の違いかなあ・・・。良く分かりません。

      引用  返信

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

    ABOUTこの記事をかいた人

     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。