サーブとリターンに課題の残る悔しい敗戦(2012USオープン3回戦)

2012 US Open
3rd Round
Marin Cilic [13] def. Kei Nishikori [17], 6-3,6-4,6-7(3),6-3

うーん、いいプレーも多かったしストローク力はさすがなんですけど、評価の難しい敗戦でした。

まず敗戦は仕方ないです。チリッチは強かったですし錦織もチャンスありました。

課題はサーブとリターンでしょう。

サーブはダブルフォルトが8本と多く、またブレイクに結びついていました。
サービスエースを取れるサーブならある程度のダブルフォルトは仕方ないと思うのですが、エースは4本でしたのでダブルフォルト8本は多すぎると思います。

少なくともダブルフォルトの数はエースの数を超えてはいけないと思います。これが1つ目の課題。

2つ目は相手の2ndサーブに対するリターンです。

2年前の対戦でもそうでした。チリッチの長身から繰り出される高く跳ねるセカンドサーブを返せませんでした。
2年前の対戦ではトライし続けて第4セットには自分のものにしました。それ自体はあっぱれなのですが、チリッチの疲れによる跳ねの減少もありましたしかなりリスクの高い戦い方だったと思います。

で、今回の対戦はどうするかと思ったらまた同じ結果でした。どうしてもアウトしてしまう。
第3セットは思い切って踏み込んで行って攻撃することに成功しましたが、第4セットにそれを続けることができませんでした。

確かにあのサーブはすごい。飛んでもなく跳ねて打ちづらいと思います。
しかしセカンドサーブです。そんなに効果的だとしたらなぜ1stで使わないのか。
1stサーブよりはポイントの取れないサーブだと認識しているからこそセカンドで使っているはずで、そのサーブを返せないのでは相手に楽をさせてしまいます。

セカンドが返って来ないのなら1stは入らなくてもいいや、とばかりに思い切って打たれてしまうことになります。

チリッチはサービスゲームで相手にプレッシャーをかけられるとサーブが弱気になることがありますが、その状態に持ち込むことが出来ませんでした。

やっかいなサーブであることは間違いないのですが、上位選手はこれを返してチリッチを攻略しているのですからなんとかしないと行けないと思います。同様に跳ねるサーブを打つ長身選手は他にもいます。デルポトロ、イズナー、カルロビッチ・・・こういう選手達と対戦して勝っていかなければならないのです。

ストロークの攻撃力はもう世界トップクラスです。あとはとにかくミスを減らすこと。それしかありません。
今日は押してる感じがあったのになぜかリードを許す展開でした。
それはデュースやブレイクポイントでミスをしてしまったからに他なりません。

好材料は第3セットでの粘りとあきらめない気持ち、献身的に動いて1ポイントを取りに行く姿勢でした。
ストレート負けしそうなところから果敢に攻め、走り、拾い、声を上げてサーブを打ちました。
その気迫がチリッチの弱気を呼び寄せてタイブレークを取るところまでは非常に素晴らしかったです。

残念ながら35度を超す猛暑の中、常に劣勢のプレッシャーと戦い、ここで全てを賭けてギアを上げてしまったので、第4セットまで体力と集中力を持たせることができませんでした。
これは仕方ありません。第1,第2セットをなんとかするしかなかったと思います。

チリッチ、素晴らしかったしよく考えてプレーしてきました。
ディフェンスがよく錦織のエース級の球をカウンターで深く返したり、サービスのコースを読ませない配球が光りました。
デュースサイドから錦織のフォアを狙ったサーブは錦織の弱点を突いてのものでしょう。今後は他の選手も狙ってくると思います。
錦織の身長+厚いグリップという条件ではここは必然的に返しにくくなります。

チリッチの1stサーブの確率は40%台と低かったにも関わらず1つしかブレイクできなかったのはひとえに2ndサーブを攻略できなかったことに尽きます。

身長のことを今更言っても仕方なく(178cmは高くはありませんが致命的なほど低くはありません)、跳ねるサーブ対策をこれからしっかり積んでいく必要があります。(いや錦織が言い訳してるわけではないですよ?w 読者的にね。)
ちなみに175cmのフェレールはチリッチに3勝1敗で勝ち越しています。

これまでにもイストミンやカルロビッチの同様なサーブに苦しむ姿を見てきました・・・。私は高い打点のリターンは錦織の弱点の1つだと思っています。

スコアを付けていますが、セカンドサーブのリターンをミスすると、例えば「2BRO」とか書くことになります。
(2:セカンドサーブ、B:バック、R:リターン、O:アウト)

今日は2BROや2FRNを書く機会が非常に多かった・・・。
検索したら2BROが7回、2BRNが5回、2FRNが5回、2FROが4回です。
これでも回数としては2年前の対戦よりずいぶん減ったと思います。
疲れてしまった第4セットはチリッチのサーブ自体もさらによくなり、これらの記号を書く機会が増えました。
第1,第2セットでは数は少なかったですが大事なデュースやブレイクポイントで出てしまったのが悔やまれます。

はっきり言って錦織のストロークはすごいので、あとはこのサーブ、リターンの課題が少しでも改善されれば・・・トップ10ありますよこれは。

次はデ杯、楽天オープンですね。ぜひ生で見て錦織の進化を確認して下さい。

69 件のコメント

  •  圭の今のRKが不相応ではないかという見方もあるかと
    思いますが、トップ10の選手は別としても、11位~30位の
    選手というのは好調の時期、今一の時期、不調の時期があり、
    好調の時期に大きくポイントを稼いだ結果、現在のRKを
    維持しているという選手がほとんどです。

     以下は、11位~30位の中から、今一および不調と思われる
    選手の全英以降の勝敗と、その間の戦績から推定される現在の
    実質RK帯を示したものです。

    ●今一の選手
    15 Dolgopolov 11勝-4敗 50位-36位
    17 Simon 5勝-4敗 49位-37位
    18 Nishikori 10勝-6敗 118位-5位(25位)
    20 Kohlschreiber 8勝-4敗 78位-49位

    ●不調の選手
    23 Mayer 3勝-5敗 243位-42位
    26 Verdasco 4勝-4敗 483位-50位
    27 Seppi 2勝-4敗 178位-44位
    29 Youzhny 1勝-5敗 134位-32位
    30 Troicki 3勝-6敗 107位-58位

     これを見る限り、圭の状態はそのRKに対しても「不調」と
    言える程悪くはなく、フェレールに対する勝利を仮にフロック
    と考えても、せいぜい「今一」くらいの出来であることが分かり
    ます。

     どんな選手にも好・不調の波はある訳で、圭にも好調の時期が
    必ずやってきます。それを、「不調」の状態までには落とさずに
    待っていられることが重要だと思います。

     なお余談になりますが、上記の実質RK帯を見る限り、本日の
    全米3回戦で、KohlschreiberがIsner(10位)に、Dolgopolovが
    Wawrinka(19位)に勝つのは、それぞれ難しいと予想します。

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  • コリコリさん、とても分かりやすい説明ありがとうございます。
    不調グループのトロイツキなんか数年前の楽天オープンで圭君を破ったころは、本当に強かったですもんね。ま、一番大変そうなのが、17連敗後一勝下のにUSオープン一回戦でフェデラーを引きまけたドナルド・ヤング。
    少し前にアガシの自叙伝「オープン」を読みましたが、負け続けたときの心理状態の描写がおもしろかった、なにしろすごい記憶力と自己分析力ですから。体を一から作り直したようす、ブラッド・ギルバートとの熱い関係、などなど本当に面白い本でおすすめです。

      引用  返信

  • 盛田正明さんが以前おっしゃったことが心に残っています。
    世界の頂点を山に例えると、下の方は楽に登って行けるが頂上が近付くにつれ斜面は急になって一歩進むのも大変だ、と。
    今は急斜面で苦労している時期ですね。
    錦織選手をトータルで見れば、ちゃんと期待に応えてファンを喜ばせてくれていると思います。
    きっと急斜面を登りきってくれると楽しみにしています。

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  • みけさん、何とも心にしみいるお言葉ですね~(^.^)
    Keiくんが急斜面を登るのならば私たちの応援で
    ぜひ後押しをさせてほしいものです・・・

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  • 過去2試合勝利の時のチリッチはスランプ時代です

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  •  少し、落ち着いてきたのでお邪魔してみたら 、・・・
    皆さん、すっごく圭くんに期待しているんだと改めて実感しました。
    今回は、ラッキードローの上、ツォンガもいなくなりベスト8決定!って
    感じだったし。今回は、ドローが良すぎて簡単に勝ち上がったのがよくなかったのかななんて。

    話は変わりますが、今朝フェレールの試合をチラッと見たのですが、走る走る、右に左にこれでもか、もうきまったね、と言うボールまで返してポイントうばっていました。おもわず、絶句。
    背が低いとここまでしないとだめなんだと思うと圭くん、大変だなと思うと同時に改めてフェレールってどんなトレーニングしているのか興味が湧いてきました。  どなたか知っている方いたら、教えて下さい。

    あ、それから、私は2年後を楽しみに圭くんがどう成長するのか見守って行くつもりです。まだ、22歳ですから。

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  • 錦織選手、3回戦敗退お疲れ様でした。

    日刊スポーツ紙面に、全米日本男子勝ち星ランキングが載っており

     最高記録
    ①熊谷一弥 8勝3敗 ベスト4
    ②錦織 圭 7勝4敗 4回戦
     清水善造 7勝4敗 ベスト8

    と若くして早くも歴代2位タイにつけております。
    これまでも日本テニス界の歴史の扉を数々開いてくれた錦織選手、
    来年以降、勝ち星と共に最高記録もぜひ更新して欲しいですね!
    頑張れ、錦織選手!!

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  • 圭つながりさん、ありがとうございました。さっそく印刷して保存しておきます。さあ!次に次ぎに!、9月14日のデ杯に向けて、頑張れ!ジ
    ョコビッチも言ってました、「負けても、前に進むしかない!」
    応援するのみ!!!!

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  • 皆さんのコメントやWowowの記事、圭君のインタビューなどで元気が出ました!
    前の自分のコメントを見返すと結構ネガティブコメでちょっと反省してしまいました。。
    私も圭君をもちろんずっと応援してきます! そして、やっぱりトップ10プレーヤーにいつかなれると100%信じています。
     ご存知の方も多いと思いますが、USの圭君のプレッサーのリンクを一応張っておきます。
    http://www.usopen.org/en_US/news/interviews/2012-09-01/201209011346531181950.html
     今年の目標は、年末大きい失効点もあるので、ランキング20位台で終わることと、靴下をちょくちょく変えるのは豆防止だそうです。

    あと、こちら宮里美香さんのブログに画像あります。
    http://ameblo.jp/mika-miyazato/

     
     

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  • 私はこのチリッチ戦を第3セットまでしか見れませんでした。
    その後、劇場を期待して出かけたのですが、勝利を確信する感じではなく、少しの胸騒ぎを覚えていました。
    やはり、第3セットを取ったとは言え、チリッチを上回るプレーが本当にできるのか、この日のチリッチの調子が良かったので胸騒ぎにつながったのでしょう。
    泊まりで出かけていたのですが、友人との楽しい時間の間にもフッと敗戦のショックがよぎり、ずっとモヤモヤしていましたが、ここに来て皆さんと気持ちを共有し、やっと落ち着きました。
    私は圭くんへの期待がなくなる事は今はないです。
    負けても必ずそこから成長していってくれると信じています。
    去年の秋以降、勝ち方がわかってきたと言った頃のように、今後も何かが吹っ切れてプレーがまた一段上がる時が来ると思います。
    成長途中を暖かく見守りながら応援していきたいです。

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  • 私は今回のチリッチはこれまでとはけっこう違うだろうな、と薄々不安を感じていました。
    それは本人のリベンジ魂はもちろん、最近の実績と何よりも知将ボブ・ブレッドの必勝を期する表情が垣間見えるような気がしたからです。
    一方、圭君にも侮り(あなどり)というものはなかったと思いますが、ひょっとしたら潜在意識の中の「畏れ(おそれ)」という意識が少し薄かったのではないかな?という気がします。
    その意識とは人格上のリスペクトというものではなく、あくまで「テニスのレベル、強さ」に「リベンジ魂」が加わった相手への恐れのことです。

    人間は草食(もしくは雑食)動物ですから肉食動物と対峙すれば本能的に神経は研ぎ澄まされ、その動作の機敏さに全能力を発揮します。
    肉食動物を好調な上位者(チリッチ)とすれば、その姿勢と実力に対する畏敬の念と、以前の対戦にはあった緊張感とチャレンジ魂がほんの少し薄くなってしまった可能性はあると思います。
    もしそうだとすれば、それは対戦して気づいてから穴埋めしようとしてもし切れない厄介な類の障壁です。
    ‘08全米で勝利したフェレールとの2連敗や最近のヒラルド、ベルディヒなどとの敗因が、勝ち越しから得た自信と共に生じるその「緩み」のせいだとしたら、それは気に留めるべきでしょう。

    ただ、今回の表面上の敗因は、あくまでミスの少なさと質の高さの両面でチリッチに上回られてしまったということだと思います。
    ミスの数やサーブの質については見たとおりなのですが、問題はリターンですよね。
    私は圭君のフォアは、強烈な1stサーブに対してはあまりにも難しすぎるような打ち方に見えるのですが、まぁ、彼の1億倍w下手な私があまり細かいことを理解できるわけもありません。
    それでもあの、デカくて毛むくじゃらの外人のハード・ヒットを、まるで80歳のバアさんのボールのように軽々とフッ飛ばしてしまうヒッティング・パワーをリターンでも見せて欲しいという願望はあります。
    (80歳のおバアさま、いらっしゃったらすいませんw 悪気はありませんw)

    また、チリッチは主導権を握るためのワイドへのストロークが鋭かったですね。
    錦織のワイドは決めるためのショットに見えてしまいますが、チリッチのワイドは次のストレートと合わせて数も精度も上のような気がしました。
    錦織は、今回は少しあいまいなストロークが多かったような気がしますが、それは相手の球威のせいだけではなく、やはり精神的なアグレッシブさがちょっと足りなかったのではないかなぁ?という気もします。
    私は圭君に絶頂時のレンドルのようなスーパー・ストロークマシンになって欲しいという願望があるのですが・・・

    それでもやはり、錦織は私の希望の星であることには何の疑いもありません。
    願わくばデ杯で全勝し、JOでベスト4辺りにまで食い込む活躍を是非とも期待しています。
    長文、失礼しました。

      引用  返信

  • 訂正です。

    ×「一方、圭君にも侮り(あなどり)というものはなかったと思いますが」
    ○「一方、圭君にも驕り(おごり)というものはなかったと思いますが」

    可能性だとしても、「驕り」が妥当ですね。
    失礼しました。

      引用  返信

  • 期待が大きい程敗戦後のコメント厳しくなりますね まして過去勝ち越してる同年代のライバルですから・・ 今回のチリッチ戦ですがやはりチャレンジャー精神が不足した入り方だったと思います 第1セットからあのセカンドのスピンサーブにもっとアタックし続けるべきでした 早い段階でアタックし早い段階で慣れるべきでした また最近思うに(何度も言ってる事ですが)やはり08年の全米の対フェレール戦の圭のあの耀いてた躍動感、スピード感にはまだ戻ってないような気がします どなたか書いてましたが 圭に必要なのは伊達ばりのライジングショットです ステップインして叩けです!! 今から身長190CM級のサーブは無理ですしナダル級の後ろからのグリグリストロークも圭の体躯では破壊力不足です 08年の対フェレール戦は出来てましたよ ステップインしてのライジングショット あのフェレールが全然追いつかないショット連発してました あの躍動感あるテニスこそ圭の目指すテニスだと思うのですが・・・・ 

      引用  返信

  • せっかくスポーツライターの浅岡さんの記事で落ち着いたのに…
    アマチュアの方の自分よがりなコメント、分析は見てて辛いよ。
    こうした方がいい!と断定してしまう…自分病かな。
    もう少し謙虚に語たる知力が欲しい。

    テニスが未熟な人には“そうなのか!”と彼へのマイナスイメージを潜在的に植えつけそうで…嫌だな

    テニス人口が増えるのは歓迎だけど、ファンも賢くなろう!
    因みに管理人さんのコメントは好きですよ。

    ちょっとキツイことをいったかもね ごめんなさい。

      引用  返信

  • リンデンさんのご意見よくわかります。明らかに怪我前と怪我後では良いか悪いかは分かりませんがプレイスタイルや細かい部分でのフォームも異なりますね。あの頃はよくコートの中に入って行きドロップも決まっていて、変幻自在の球を予測困難なコースに打ちわける天才的なプレーヤーという印象で、あの錦織圭に魅せられてファンになったという人は多いと思います。

      引用  返信

  • 進化するために錦織が努力するように、他の選手達も努力しています。
    勝ったり負けたりは当たり前。
    ファンとしてできることは、批判ではなく応援ではないでしょうか。

    そんな中、テニス好きさんのコメントは重いものだと思います。
    ファンサイトで錦織のマイナスイメージを広げるなんて悲しすぎます。

      引用  返信

  • 島様
    私の場合はこういう文を読みにお邪魔しております。
    とても面白かったですし、いろんな所でしっくり来ました。
    ありがとうございました。

      引用  返信

  • 確かに素人のしったかは痛いは。

    俺も錦織君の試合かかさず見て大ファンだけど、彼が負けても残念だけどショックだとかそういう気持ちはおこらないなー だって究極的には他人事でしょ?! 自分の人生を生きようよ

      引用  返信

  • みなさん偉いんですね
    僕は錦織がんばれしか言えませんし
    そう言い続けます
    錦織選手を信じるしかないんです

    僕はチリッチも錦織も一緒に次世代のトップ10になって欲しいと思っています

      引用  返信

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。