軟式上手はテニス上手

(現在では軟式テニスは「ソフトテニス」と呼ばれているようですが、本記事でははっきり区別するために「軟式」「硬式」と呼ぶことにします。)

軟式テニスから硬式テニスに転向した方は、バックハンドやボレーの違いに戸惑うことが多いようです。

それをもって「なかなか軟式の癖が抜けなくて・・・もう少し硬式を始めてればな・・・」

とボヤく人に遭遇したこともあります。

しかし、それを補って余りあるアドバンテージ(硬式をプレーする上でも)が軟式テニス経験者にはあります。

軟式から硬式に転向した人に共通する特徴は以下の通りです。

  1. フォアハンドが良い。スイングスピードが速く、力を入れるのがうまい。
  2. フットワークが良い。運動量が多く、ボールをよく追いかける。
  3. テニスのゲーム性をよく理解している。つなぐところと打つところの判断が良い。「なんとかしよう」とする。

1.フォアハンドが良い

軟式のラケットのグリップは、公式のように扁平な八角形ではなくて、正八角形です。硬式しかやったことのない私が軟式のラケットを握ると、フェイスの向きが分からなくなってしまうのですが、軟式のプレーヤーの方は混乱することはないようです。

軟式のフォアハンドのグリップ(握り方の方)はフルウエスタンが基本です。そしてボールが硬式より飛ばないので、フルスイングも基本です。

フルウエスタンでフルスイングと言えば、硬式のイメージだとトップスピンですが、軟式ではこの状態でフラット気味の球を打ちます。トップ打ちというやつです。

トップスピンのようにこすり上げではなく、高い打点からむしろ抑え気味に打つスピードボールです。もちろんトップスピンも打つことができますが、あまり打たれていないようです。

この強打の感覚は大きな武器です。軟式出身の選手は、みな厚い当たりを身に付けています。

フォアハンドのフォーム自体も、長い時間をかけて硬式の方がむしろ軟式的な打ち方に近づいてきているようです。

2.フットワークが良い

軟式では硬式ほどボールが飛びませんので、エースが取りづらいです。逆に言えば、がんばって走ればボールに追いつけることが多いです。そのため、軟式出身の選手はがんばって走ってボールに追いつくことに対する意識が高いです。

硬式ですと、球足が速いので早々とあきらめてしまう人が多くなります(私もその一人・・・)。また、軟式出身の人は意識が高いだけでなく、実際に走り回っていますので足腰が強い人が多いです。

3.テニスのゲーム性を理解している

これは違う競技とは言え、硬式テニスと同じ大きさのコートを使い、ルールもよく似た軟式テニスを経験しているのですから、まったくのテニス初心者と比較して理解度が高いのはある意味当たり前かもしれません。

実際私も、卓球やバドミントンなどは同じラケットスポーツということもあり何もしなくてもある程度はできます。(もちろん軟式テニスも)

しかしそれ以上に、軟式テニスの戦略性の高さというものが、軟式出身選手のゲームセンスに大きく影響しています。

軟式テニスのポジショニングは、前衛がネットにド詰めしているなど硬式とは異なりますが、戦略性の高さはある意味硬式テニス以上かもしれません。なかなかエースが取れずラリーが続くので、ラリーの組立てがものすごく重要になってきます。

「いい球を打つ」ことの重要度は、硬式テニスより明らかに低いと思います。

球出しやラリーをやらせたら、(特にバックハンドで)技術的なアラが目立つ軟式出身者でも、試合をやらせてみるとやはり試合巧者であることが多いです。

もうフォアハンドが良くてフットワークが良い時点で、テニスにとって重要なことの半分か、場合によってはそれ以上は実現できていると思います。

軟式出身者の課題はむしろサーブでしょうか。入れることだけなら問題ありませんが、厚いグリップで羽子板的に打つセカンドサーブではちょっと不利だと思います。

軟式出身者はまずはバックやボレーは入ればよし、サーブに磨きをかけよう!

が私のメッセージです。

苦手なショットがあるうちはどうしても思い通りにいかない場面が出てくるでしょうが、武器を生かして頑張ってほしいです。

軟式テニスと硬式テニスの共存について

ネット上で「軟式テニスが硬式テニスの発展を妨げている」的なことが書かれていたのを読んだことがあります。

私自身は軟式テニス経験者ではありませんが、これは悲しい発言だと思います。

軟式テニスは硬式テニスのために存在しているのではなくて、別の独立したスポーツです。軟式は硬式のファーム(2軍)ではありません。

私自身は軟式テニスの試合も見て、「これは面白い」と思いました。GAORAでもたまに軟式の試合を放映していますが、かなり楽しめますよ。

フェデラーやナダルが軟式をプレーしたらどうなるだろう?なんて想像すると楽しいです。

軟式をプレーする人は皆、心から軟式を楽しんでプレーしています。何回かこのブログにも登場した「勝負がすべて」の私の父もそうです。

確かに中学校で硬式テニス部がほとんどなく、硬式をやりたくても軟式を選択せざるを得ない状況は全国で数多く発生しており、私も中学校にも硬式テニス部が増えることを願っています。もちろん軟式テニス部を廃部にせずに。

(高校についてはすでに多くの学校に硬式テニス部があると認識しています)

しかしそれが、日本人選手が世界で通用しないことと何の関係が?と思ってしまうのです。むしろ、プラスに働いていませんかね?

だって別のスポーツですよ?

軟式テニスがあるおかげで硬式テニス人口が増えないのであれば、野球だってサッカーだって同じではないでしょうか。でも野球があるせいで硬式テニスが発展しない、ということは言われない。

軟式テニスをプレーする人は、硬式テニスのプロのプレーに対しても、全くテニスをしない人よりずっと興味はあるでしょう。

軟式テニスから硬式に転向する人が一定の割合でいる以上、硬式テニスの発展に寄与していると思うんですが。硬式から軟式への転向はあまり聞いたことがありません。

ここで「いや、軟式テニスがもしなかったら、硬式テニスをやっている人がもっといたはずだ」という主張はナンセンスだと思います。

すでに存在しているスポーツを、「なかったら」なんて失礼以外の何者でもないですから。

それから部活があれば世界に通用する選手が生まれる、という考えもよく分かりません。中学から始めて、世界のトップに行けるほど甘い世界ではないと思いますし、やっぱり世界を見据えるなら幼少期にテニスクラブで始めるしか現状、ないのではないでしょうか。

また、日本の上位だったら軟式出身者でも不可能ではないと思います。最近の日本トップクラスの選手に軟式出身者がいるか分りませんが、TVの解説で活躍している坂本真一さんは元デ杯選手で、高校から硬式に転向しましたし、元日本No.1で元デ杯監督の神和住純さんも中学時代は軟式でした。おっと忘れちゃいけない。世界レベルに到達した浅越しのぶさんも軟式出身でしたね。

まとめます。

  • 「中学に硬式テニス部がない」ことは硬式テニスファンとして、改善してほしい課題ではありますが、それは軟式テニスのせいではないと思います。
  • 硬式も軟式も、面白くて魅力的なスポーツです。二者択一ではなくて、どっちも盛り上がってほしいと思います。

9 件のコメント

  •  神和住純さん、なつかしいですね。
     平井選手と組んだダブルスで、田園コロシアムで
    スミス/ストックトン組を破った試合を興奮して生応援
    した記憶が鮮明に思い出されます。

     良く知らない方も多いかと思いますが、173cmの身長で
    クレーコートでもサービスダッシュを行い、世界ランク
    70位台までいった偉大な選手です。彼のネットプレーは
    絶品で、歴代日本人選手No.1だと思っています。

     彼の場合に限っては、軟式経験者の特徴は当てはまって
    いないようです。

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  • 国枝さんのバックハンドも軟式打ちのように見えます。
    かなり厚い面でだぶんフォアと同じ面で打ってますよね。
    車椅子だからグリップチェンジしなくていい為ですね。
    ちがってたらごめんw

      引用  返信

  • コリコリさん

    神和住さんのプレーはリアルタイムでは知らないのですが、すごい選手だったことはよく知っています。私の神和住さんのイメージは、NHKのテニス教室ですね。オープニングの音楽の時に華麗なネットプレーを披露していた記憶があります。

    確かに軟式のイメージではないですね。上手く硬式のスタイルに順応したんですね。当時はSv&Vが盛んでしたし。

    reikoさん

    車いすテニスの場合、1バウンドで打とうとしたら打点が肩より高くなってしまうことが多いので、あのグリップが適しているのだと思います。
    薄いグリップだと高い打点に対応しずらいですからね。(スライスになる)

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  • 先日、軟式出身の新入部員が入りました。
    全くの初心者と明らかに違うのは、「ボールがくる位置に正確に入れる」という事。
    初心者はボールの距離感が全く分からないので、位置を把握するまで時間がかかります。その違いだけでも上達のスピードにかなり差があります。
    私も軟式出身ですが、軟式やってて良かったと思っています。
    なので、軟式クラブを廃部にしないで硬式を増やす案に賛成です!

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  • 確かに、打点の感覚はテニスは独特ですからね。
    球技は基本的にボールの軌道の後ろに体を入れる。
    体を軌道からずらしてボールを横にそらすのはテニスと野球のバッティングくらいか?
    他にもありそうだけど。
    卓球やバドミントンもラケットスポーツだけど、テニスほどは横向きとか打点を体の横にとかは意識しなくて良い。
    卓球やってる人は結構ストロークできるし(慣れは必要)、バドミントンやバレーボールやってる人はサーブやスマッシュが強いです。
    バレーボールやってると、どうしても正面向きサーブになってしまうけど。
    癖はあるかもしれないけど、トータルでは他のスポーツの経験はプラスだと思いますねー。

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  • 欧米の中学校、高校では軟式テニスは行われてないように思います。日本とアジアの一部の国で行われているようです。
    世界ランキング上位の欧米の選手も日本の錦織選手も子供の頃から軟式テニスはしてないと思います。
    日本の中学校のテニスの部活では私立中学は別ですが、95%以上が軟式テニスだと思います。
    中学の部活で硬式テニスしたくても地方の中学は軟式しかないので軟式テニス部に入部しないといけない事になっています。

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  • テニス大好きでやってみたくてテニス部に入りたいです。

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  • 20年前以上の話ですがテニスをしたくて中学生になって部活に入ったのですがそこは軟式テニスでした。
    入部するまでそもそも軟式テニスの存在自体知りませんでした。
    入ったら軟式だったので野球と一緒で中学は軟式、高校は硬式が普通なのかな?と疑わずに軟式してましたねー。

    なんやかんや中学、高校と軟式をやって大学から硬式に転向したのですがはじめから軟式硬式と分かれてたら恐らく軟式には入部しなかっただろうなーとは思います・・・

    子供の頃はテニススクールなるものがあるなんてことすら知らなかったのでテニスをしたい=部活って思ってましたからね・・・

    無知は怖いです。

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  • はじめまして。記事を読んでとてもやる気になりました。
    私は中学でソフトテニスをして、35歳最近硬式テニスを始めました。
    楽しくて仕方ないのですが、軟式と硬式の壁にぶつかっています。
    おっしゃるとおり、フォアハンドとボールを追いかけることは得意です。
    サーブもソフトテニス感覚では打てますがフォームがイマイチかっこよくないし、無駄な力が入りすぎて消耗します。
    そして何より、試合が単調で退屈に感じます。もっと駆け引きができたら嬉しいです。
    昼間のレッスンは優雅な専業主婦の奥様チームなので、あえて土日のメンズだらけのレッスンに遊びに行ったりするほどです。

    記事にもありましたが、バックとボレーは一旦、置いといて、サーブを冬までに完成させたいです。

    また読ませてもらいます。ありがとうございました!

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。