錦織圭、悔しい1回戦敗退(2015全米オープン)

2015 US Open
1st Round
Benoit Paire def. Kei Nishikori[4], 6-4,3-6,4-6,7-6(6),6-4

皆さん、信じられない思いでしょうし私もショックですが、これがグランドスラムの怖さです。

ペールは勝利に値するテニスをしました。メンタルに問題がある(よく切れる)と言われ、確かにペースの掴みにくい一人舞台テニスでしたが、最後までレベルを保つどころかファイナルセットでさらにパワーアップ。見事としかいいようがありません。

錦織としては言い訳の出来ない敗戦で、きっと批判も出ることでしょうが、このブログでは試合の振り返りと課題設定はしますが、錦織を否定することはしません。
常々言っています。ATPは勝ったり負けたりです。いいときも悪いときもあるんです。
これまでいいときもずいぶんあったでしょう?
私の役割は、勝ったときに浮かれすぎること、負けたときに落ち込み過ぎることを防ぎ、ニュートラルな目で錦織を見てもらう手助けをすることです。
少なくとも6ヶ月以上の中長期的スパンで見ないと本質は見えてこないと思います。

ということで試合を振り返ります。

ベストなプレーでなかったことは試合の最初から明らかでしたが、なんとか我慢を重ねて4thセットのタイブレークではマッチポイントまでこぎ着けました。
そこででたフォアの決め球のサイドアウトが痛かったですね。紙一重の勝負でした。

精度を狂わせたのは疲れだったと思います。
ドロップショットで相当走らされましたし、ラリーは少ないもののストップ&ゴーの多い試合でした。多分、流れの中でストロークをする方が、ラリーが長いとしても疲労度は少ないと思います。

ファイナルセットは、今日は疲れが見えました。
修造さんはメンタル疲れが体を重くすると言っていましたが、よく分かりません。そうかもしれませんが、よく分からないので目に見える現象を信じると体の疲労だと思いました。

セカンドサーブをもう少し叩ければ楽に勝てたかもしれません。これは最近は克服した課題だと思っていたのですが、ラリーになったら主導権を握れるものの、そこまで行かないのでフラストレーションが溜まるし、自分にプレッシャーが掛かることに繋がってしまいました。
また、ペールをのせる要因になってしまいました。

ここ1年、「リターン返球率」に注目して錦織の試合を見ていますが、リターン返球率が高い試合はほとんど勝っていると思います。
1stサーブの確率などがよく注目される指標ですが、最近、リターン返球率こそキーファクターとなる気がしています。

まだスタッツは見ていませんが、今日の試合でも1stサーブの確率は悪くなかったはずです。それでもブレイクされたのは数字に表れないサーブの質だと思います。相手のリターンの調子もあります。
今日の錦織のサーブは絶好調ではないものの、非常に工夫をしていました。セカンドでスライスを用いたり、フォア側に打ったり、1stでスピンを打ったり。

先日の「ぼくの かんがえた さいきょうの マレーたいさく」を読んだのではないかと思うくらい(間違いなく読んでないですがw)。

サービスゲームとリターンゲームは互いに影響を及ぼし合っています。どちらかが調子よければもう一方にも好影響を与えます。
錦織のリターン返球率の悪さ(1st含め)が他のショットに影響を及ぼしたように思いました。

いつもはこの展開でも勝っていたし、今日も勝ちかけまで行きました。
それでもやはり、この展開で100%勝つことはできないので、フルセットまでもつれたのが良くなかったと言うことだと思います。
むしろこれまで勝負強さで勝ってきたといことで、今後はストレートで余裕を持って勝っていく試合を増やさないと行けませんし、それは錦織サイドも長年の課題として取り組んでいます。

今日、一番もったいなかったのは1stセットの入りでしょう。第2ゲームをブレイクできなかったことで相手を落ち着かせ、自分は落ち着けなかった。そして先にブレイクされた。ペールのような選手は調子に乗せないに限ります。

相手のミスかエースで決まる展開の中、我慢のテニスを強いられたことは仕方なく、また勝つためにはそうすべきだったと思います。
そうして上手く第2、第3セットを取りましたが、第4セットからエネルギーを出せていけませんでしたね。

修造さんのネガティブ解説が不評だったようですが、私は概ね正しく戦況を伝えていると思いました。
(それでも視聴者としてポジティブに話して欲しいという気持ちは分かります)

こうなってしまった原因はよく分かりませんが、あれこれ考えても仕方ないでしょう。
私たちにできることは、1戦ごとに錦織に対するイメージや評価を微調整していくことだけです。
この1戦で錦織がダメになってしまうわけではないし、トップ5であることは変わりません。実績も出しています。
まだ今年もデ杯、ジャパンOP、上海、パリ、WTFと大会が目白押しです。
そこで活躍する錦織の姿が私には見えます。

今日負けたことで、錦織はジャパンオープンに本気で勝ちに来ると思います。
負けていいということではありませんが、こういう敗戦が選手を強くするのです。

ファンとしてはしばらく我慢のときです。錦織だって今日の試合ずっと我慢して頑張ったじゃないですか。私たちも頑張りましょう。
現状はジョコビッチ、フェデラー、マレーにはまだ及ばない、それでいいじゃありませんか。実際実績で負けてるし、あまり比べても意味がないし錦織は過去の錦織と比べて成長していければいいんじゃないですか?その先にグランドスラム優勝や世界一があります。

これまで順調に伸びてきていることはすごいことですよ。トップ10に入ったがその後伸び悩んでランキングを落とした選手はたくさん居ます。
そういう選手も努力して再びカムバックしてきたりします。やっぱりテニスはグランドスラム中心だから、確かに今日の敗戦は大ショックだけど、マスターズ1000やATP 500やデ杯もやっぱり大事ですよ。
そこでどんな選手にどんな勝ち方、あるいは負け方をするかってのも大事なことです。
今日は41位が相手ってことでたぶん「がっかり」なんでしょうけど、このあとペールが快進撃を続けたら「やっぱり彼の選手は強かったんだ」ってことになりますよね。

ぜひペールの2回戦以降を見てくださいね。錦織に勝ったプレーが続けば16か8には入ると思いますよ。持続させるのは難しいという結果になる可能性も高いと思いますが、そうなったらそうなったで、テニスというスポーツの本質の一部を理解することができるんじゃないでしょうかね。

実力通りに勝負が決まるのであれば、試合は必要ありません。

ペールと錦織が10回試合したら恐らく錦織が勝ち越すと思いますし、次の対戦ではまた違った展開が待っていると思います。
(実際、今日の試合は過去とは違った展開だった)
その少ない方の確率の結果が出てしまったとうことで、あとはこの敗戦を錦織サイドが今後にどう活かすかだと思いますよ。
打っていくのか、繋ぐのか、サーブも確率重視で行くのかエース狙いを増やすのか。リターンをどうやって安定させるのか、アタックを増やせば返球率は下がりますが両立が必要と思います。

などなど。

こういうときこそ、応援していきましょう。(おわり)

158 件のコメント

  • この日、なにかいつもと違うと思ったのはストリングテンションを(もし聞き間違いでなければ)69で途中で注文したことです。こんなに固く注文することないですよね?普段。ペアの球への対応もあったと思いますが、私の勝手な推測では、この日は疲れからか身体にバネがなくボールが飛びすぎてしまってそれをストリングテンションで補っているように感じました。YOUTUBEにいくつもこの大会での圭くんの練習ビデオが上がってますが、動きは俊敏だけれどもとても力んでる様子が伺われました。一方ほかの選手の練習ビデオをみると、もっとリラックスしてるのが分かります。チャンの試合に向ける勝つためにスピリッツの注入は素晴らしい結果をもたらしていますが、今回それが空回りしたというのが感想です。メキシコ大会に関しては風邪が原因かなぁと思いましたが、もしかして同じ理由かもしれません。ドルゴ戦でのコートチェンジの歩きが異様に遅かったですよね。
    しかし無駄な失敗なんてないわけで、きっと今後はこれを踏まえて大きく前進してくれるだろうと信じています。

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  • バックスピンさん、コメントありがとうございます。リラックスしてプレーすれば、自然と自力が発揮でき、持ち前の想像力あふれるプレーが勝利をもたらす、これが圭の勝利の方程式だと考えています。チームKでこの敗戦から学ぶことが多いと思います。災い転じて福と成してほしいと願っています。人一倍負けず嫌いの圭ですから、必ずそうするでしょう。

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  • 又 もう少し力量を付ければ 受けて立つ プレー が可能になって来ます! 対 ペール戦、瞬間瞬間 自制心を見失ったのだろうと 錦織らしく無く! 珍しい現象だと思う!あの敗戦を通して もう一息 焼が入ります!
    何しろ 相手は 正体の掴み難い 6’05” の 変な フレンチです!釣り落としデシタ!気にし無い 気にし無い!

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  • 団長さん 圭くんはこちらのコメント等、間違いなく読んでくれています。
    裏コーチとして厳しいお言葉こそ進言下さいませ。
     
    そして修造さんのメンタル疲れが体を重くすると言うのは
    分かる人間には身に滲みるものです。
    ですが、本人はその時メンタル疲れを認識していないと言うこともあるかと思います。
    が、いつも心と身体は一体です。

    彼にとって本当にピタッと相性の良いコーチが他にいそうな気も密かにします。

    道すがら失礼致しました。

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  • 昨日、ジョコの試合を見ていて、圭もこういう試合が出来ないかと思っていました。どう表現していいか分からなかったんですが、節穴さんの言う、「受けて立つプレー」ですね。もう、トップ5に定着する実力者です。間違いなく。フィジカル、メンタルともムダにエネルギーを消耗しない戦い方に脱皮した方がいいと思います。

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  • 節穴さん

    あなたのテニス分析にはセンスを感じます。
    最近の錦織選手は瞬間瞬間、自制心を失いがちです。
    それは、精神=メンタルが強いと言えないからです。

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  • なぜ負けてしまったのか、本当にわかりません。
    セット間にタオル…かみかみ。
    ミスするとウェアー…かみかみ。
    大人の男性のかみかみを見たのは初めてです。
    サーブを打つ前のルーティング、ボールワンバウンドですぐに打つ。
    ラケット、持っているのに騒ぐ…。

    錦織選手も相手のペースを乱したり、ドロップを使ったりしているのに何故!?嫌な事をしたくなかってのでしょうか。
    お互いラリースピード勝負では、もの凄いのに不思議な試合でした。

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。