ラケット選びの指針(1) 重さ

「どのラケットを買えばいいでしょうか?」と質問を受けることがあります。難しい質問です。

各メーカーの現行モデルに詳しいわけではありませんし、結局は自分の好みの押し付けになってしまいがちです。

それに、ラケットはその重量と配分、剛性の違いによって大まかにタイプ分けができるものの、同じタイプの中では、「ボールの飛び方に関しては」それほど違わない、違いようがないというのが持論なので、あいまいな答えしかできないことが多いです。

それでもラケットが違えば、たとえ同タイプのラケットでもかなり感覚的に違って感じられるのは事実です。それは、実際のボールの飛び方とはあまり関係のないところでのラケットの特性が、フィーリングに大きく影響するからだと思います。

具体的には、音、振動、衝撃、グリップの形状・サイズなどです。フェイスの面積が同じでも、形状が異なればスイートスポットの位置が微妙にずれてきますので、フィーリングも異なるでしょう。

人間の感覚は鋭いので、たとえば同じラケットでフェイス面積が5平方インチ違う2つのモデルがあった場合、交互に打ち比べてみると感覚の違いが分かります。

しかし、「実際のボールの飛び」に関しては劇的に変わることはないと私は思っています。逆に、同じ打ち方をして落下地点が1mも2mも違ってしまったら大変です。そういうこともあって、私に「どんなラケットがいいですか?」と言われても条件付き、一般的なアドバイスしかできず、延々と蘊蓄を聞かされる羽目になりますので、聞かない方がいいと思いますw

とはいえ、「ラケットを振る」という動作が物理法則に支配されいる以上、普遍的な傾向というものは存在します。

本日はそのうち、「重さ」について述べたいと思います。

結論から言うと、「腕力が許す限り、重いラケットを使う方がいい」と思います。

ラケットの軽量化技術は、ずいぶんと進歩しました。今ではおそらく、200gくらいで十分な強度を持ったラケットを製造することは可能でしょう。しかしそのようなラケットは存在しません。メリットがないからです。

よく勘違いされるのですが、「軽量ラケット=パワーのあるラケット」ではありません。

軽量ラケットを使うと速い球が打てるのは、ラケットにパワーがあるからではありません。

まず第1に、軽量ラケットは得てしてフレームが厚く、剛性が高いこと(=反発係数が高くなる)

第2に、軽量ラケットはフェイス面積が大きいものが多いこと(今日は説明しませんが、面積が大きいほど飛びます)。

そして、スイングスピードを速くできるからです。

人間の腕力は一定ですから、同じ力で重いラケットと軽いラケットを振る場合、軽いラケットの方がスイングスピードが速くなります。

その一方で、今度は「同じスイングスピードでラケットを振る場合」を考えると、重いラケットから放たれるボールの方が速くなります。

つまり、重いラケット=パワーのあるラケット です。

力を入れて打つ場合、ラケットの重量効果によるボールのスピードアップ(重いラケット)より、スイングスピードのアップによるブールスピードのアップ(軽いラケット)の方が効果が大きいため、結果として軽いラケットで速い球が打てるだけです。

ということを踏まえて、軽いラケット、重いラケットそれぞれの利点と欠点を挙げてみましょう。

軽いラケットの利点

  • スイングスピードを上げることができる
  • 素早いラケットさばきができる
  • 疲れにくい
軽いラケットの欠点
  • ラケットにパワーがない
  • 重いラケットと比べてオフセンターでの面安定性がない
重いラケットの利点
  • ラケットにパワーがある(同じスイングスピードならボールがよく飛ぶ)
  • オフセンターでの面安定性が高い
重いラケットの欠点
  • (軽いラケットよりは)スイングスピードが上がらない
  • (軽いラケットよりは)素早いラケットさばきができない
  • (軽いラケットよりは)疲れやすい

こんな感じです。当然ながら重いラケットと軽いラケットの利点・欠点は反対になります。

重いラケットの欠点にはすべて「軽いラケットよりは」という言葉を入れました。これは、十分な腕力があれば問題とならないからです。

すなわち、「腕力のゆるす限り」重いラケットを使用するのが、平均的には良い結果をもたらすと思います。

「平均的には」と書いたのは、軽いラケットのメリットを最大限享受できるプレースタイルなら、当然軽いラケットの方が良くなるからです。

スイングスピードを高めることによってスピードボールを打ちたい人、ビッグサーブを打ちたい人、強烈スピンを打ちたい人、などです。これらのメリットが非常に大きければ、デメリットに目をつぶって軽いラケットを使用する意味はあるでしょう。
(が、あまりそういう人はいないでしょうね。デメリットが気になるはずです)

軽いラケットは球際でラケットがよく出てくれますが、ラケット自体のパワーがないので当てるだけでは返りづらくなり、結果として振ってしまう(=ミスショットの原因となる)ことになるかもしれません。

軽量ラケットは、ラケットのパワー不足を補うためにトップヘビーになっていることが多いです。こうすることによって、スイング時の「ラケットのパワー」を上げるができます。

しかし、あまりに軽量になりすぎるとバランスポイントが38cmとかの超ヘビーになり、とっさのラケットワークに支障が出てせっかくの軽量の良さが出せなくなったりします。それに、トップを重くすることによるパワーアップは、スイングするときのみ恩恵を受けるので、ボレーでは効果が低いでしょう。

軽いラケットを使うべき人と言うのは、本当に非力でスイングスピードが上がらない人だと思います。これは個人的な意見であることを断わっておきますが、女性でも最低、280gは欲しいと思いますし、300gでも重くないと思います。

重いラケットの、「そんなに強くスイングしないでも返る感覚」を覚えたら、安定性が増すと思います。

8 件のコメント

  • とても興味のあるテーマでした!
    私は、ウィルソンのKSIX1LITEという、とても軽いラケットなのですが、圭スペックを借りて打ったときに、重いラケットのメリットに記載されている通りのことを強く感じました。
    年明けにテニスを再開するのですが、腕の筋力が少し戻ったら、もうちょっと重いラケットの購入を検討します!!

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  • 最終的には「使いやすさ」「手への負担」「ゲームの勝ち負け」
    等は度外視して、「ワシはコレ使ってテニスしたいンぢゃぁっ!」
    って思いだけでラケット選らンどります、はいww
    ちなみに身長168cm体重60kg握力50kgのオイラは
    K-ProStaff88 総重量400g G4 を使用中w
    ハッキリ言うと身体には優しくないですなwwwwwww

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  • 手に持つ道具、特に長いものの場合は重量とバランスの変化で使い勝手が相当違うだろうなぁと想像していました。
    様々なスペックのラケットを振って違いを感じるのはおもしろそうです。マイ・ファースト・ラケットにもう少し神経を通してからトライしてみようと思います。

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  • 重い方が打ち負けない(同じスイングスピードならパワーがある)のは解っているんですが、手首を使ってスピンを掛けるので軽くて操作性のいいラケットでスイングスピードで打ち負けないようにしております。(それも最近は年齢的・体力的理由から難しくなってきていますが)
    最近の私の場合、ラケットを新しいモノに変えるのはモチベーションを上げるという部分がだいぶ大きくなってきてます。w
    というワケでまた買ってしまいました...
    ブツは今まで自分の中で「反則ラケット」としてあえて使わなかった「あのバケモノ(のように売れてる)ラケット」です。とうとう禁断の実に手を出してしまった?w

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  • テニスは(テニスだけじゃないけど^^;観戦専門なので)プレーしないのですがラケットが進化しているとは聞きますが
    20~15年前はどのくらいの重さだったのでしょうか?
    このころ私の印象では重くてとて・・・

    先日テニスコートのあるホテルに置いてあったレンタルラケットを持ったら軽い印象だったので・・・
    ただ、ボールを打った訳ではないのでなんとも言えませんが。

    あと、圭クンがスポンジボールって??
    もちろん、腕に負担は少ないのは想像がつくのですが
    スポンジなのに弾むのですか??ちょっと不思議

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  • 15年ぶりぐらいにラケットを買い換えた際、最近のは随分軽いなと感じたんですが、ちょうど良かったんで今量ってみたところ以前のは347g、現在は304gでした。軽く持ってもその重さの違いは歴然としています。個人的な感覚では重い方が(特にヘッド部分)スイングスピードに勢いが出るような気がします。軽い方が風の抵抗をうけやすいというか(感覚的な感想ですみません)。
    ただ、軽いのになれてしまうともう重いのには戻せません。
    ウィークエンドプレーヤーになるとラケットなんてどれも大して変わらない、と思っていましたが人に借りてプレーした際初めてサーブを前衛の人に当てそうになりました。そんなあり得ない方向に飛んでしまうぐらいラケットによって随分違うものだとつくづく感じたのでした。

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  • ボールにワンピースの覇気をまとわせる打ち方が実際にあることをほとんど知らない。

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。