フェデラー、グランドスラム15勝達成

フェデラー、生きる伝説に

ご存じのようにウィンブルドンは大熱戦、ファイナルセット16-14という信じられないスコアでフェデラーが勝利しました。

フェデラーはグランドスラム通算15勝を達成、ついにサンプラスを抜いて史上単独1位になりました。

ウィンブルドン男子決勝はこれで3年連続ファイナルセットの決着、いずれも「歴史的試合」と呼べる素晴らしい試合でした。しかも年々、接戦の度合いが強まって来ています。

全仏優勝で生涯グランドスラム達成、そして6度目のウィンブルドン優勝で史上最多グランドスラム優勝達成&1位返り咲き。

数か月前の「フェデラー大丈夫か?」という状況からすればこの変化は驚くべきものです。
同時に厳しいテニス界というものを改めて認識させてくれました。栄華を極めたナダルは今、長期休養を余儀なくされています。
ナダルの復活(そして錦織の復活)あってこそテニス界は面白くなるというものです。2人ともお待ちしておりますよ。

フェデラーを褒めたたえる記事はネット上にあふれているのでこのブログではあえて書きません。それより私はロディックのテニスに衝撃を受けました。以下、私にしては珍しいロディック賞賛。

ロディック、26歳での急成長

敗れはしましたが、新生ロディックのテニスも素晴らしかった・・・。最後の最後でサービスをブレイクされるまでは1回もフェデラーにサービスを破られませんでした。マッチポイントに等しいブレイクポイントもありましたし、何回か「ロディックが勝つかも?」と思わせる場面がありました。

惜しまれるのは2ndセットタイブレーク6-5という場面でイージーなバックハイボレーを大きくアウトしたことでしょう。さすがのロディックもあの場面で力が入ってしまったのでしょう。あれを決めていれば(その後の展開はどうなっていたか分りませんが)2セットアップという絶対的有利な状況になっていただけに、本人も悔やまれる場面でしょう。

しかしそのままフェデラーペースになってもおかしくないところをロディックは全く崩れず、3rdセットもタイブレークにもつれます。

このタイブレークも落としてセットカウント1-2。それでも心が折れなかったロディックのメンタルに心から感心しました。

それを支えたのは自身のサービスに対する絶対的な信頼感だったと思います。たとえ相手がフェデラーと言えども、自分のサーブがきちんと入ったらブレイクされることはない・・・そんな自信とともに、鍛え上げてフィットした肉体、高くなった打点、以前よりも前になったポジショニング、積極的にネットに出ていく姿勢、どれも見事でした。

SAPオープンで錦織が威嚇された恨みは忘れていませんがw、それは置いておいて素直に賞賛に値するプレー、そして変身だったと思います。

この調子を持続できればデルポトロを差し置いてロディックが「5強」の一角を占める時代が到来するかもしれません。

なぜロディックは最後にサービスを落としたのか?

ちょうど昨年、フェデラーが負けた時と似たようなパターンで敗退したロディック、どうして最後の最後盤石だったサーブを破られてしまったのでしょうか?

私の目には、(さすがに)多少疲労があったように見えました。瞬発力が落ち、1stサーブが入りませんでした。フットワークと下半身の安定にほんのわずかですが陰りが見られ、打点が(これもほんのわずかですが)狂ってしまったように見えました。

無理もありません。ファイナルセットだけでタイブレークの2セット分以上ありましたから・・・。

フェデラーと比較するとロディックの方が力を出して打ちますし、フェデラーと対戦しているということで精神的な疲労も相当なものだったと思われます。常にいろんなショットの予測をしなくてはなりませんし、集中力を高めなければポイントを取ることができません。

2ndサーブは的確にブロックリターンで深く返され、サービスゲーム全体としてはきっちりキープができていたものの、ちょっとミスが出ればブレイクしちゃうぞ、というプレッシャーはフェデラーから掛けられていたと思います。

充実したスタッツから読み解く、勝負のキーポイント

これだけ長い試合ですとスタッツの数字も充実しています。そして試合の傾向を浮き彫りにしています。以上の考察を数字の面から確かめてみましょう。

1st Serve %
ロディック 168 of 239 = 70 %
フェデラー 127 of 197 = 64 %

二人とも1stサーブの確率は十分でした。特にロディックの220kmを超えるサーブが70%も入っているのですから驚きです。
しかしポイント総数を見てください。フェデラー197ポイントに対してロディック239ポイント。フェデラーの方が簡単にキープしていたということが分ります。

サービスエース
ロディック 27本
フェデラー 50本

1stサーブ平均スピード
ロディック 127MPH=204km/h
フェデラー 118MPH=189km/h

2人の1stサービスの速度は15km/hの差がありますが、サーブの遅いフェデラーがロディックの倍近いサービスエースを取っています。その要因としては

  • フェデラーのサーブのプレースメント、配球が良い
  • フェデラーのリターン時の読みがするどい
  • フェデラーのリターン時の反応が良い
ということが挙げられると思います。ロディックのサーブは決して悪くなかった(というかすごかった)。
フェデラーの方が楽にキープしていた、というのはこのエースの差だと思います。
しかしロングマッチとはいえ、エース50本ってなんじゃそりゃ。すごすぎる。

Winning % on 1st Serve
ロディック 140 of 168 = 83 %
フェデラー 113 of 127 = 89 %

どっちもすげー高い。1stサーブが普通に入ってる限りはサービスゲーム安泰という数字。

Winning % on 2nd Serve
ロディック 31 of 71 = 44 %
フェデラー 42 of 70 = 60 %

ロディックの数字はもう少し欲しいところだが、1stサーブの入る確率が高く、得点率も高いのでこのくらいでもキープに支障はないでしょう。
しかし、1stサーブが入らないゲームが出てくると少し危なくなる。これがまさにファイナルセット最後、第30ゲームの状態。
フェデラーの60%はSUGEEEEEEEEEE。

エース(サーブ含む)
ロディック 74本
フェデラー 107本

凡ミス
ロディック 33本
フェデラー 38本

合計400ポイント以上やって凡ミスが30本台ってのは2人ともすごいと思います。そしてフェデラーのエース107本という数字も。

さてスタッツを一通り見て、これは結構勝負に影響したのではないかな?と思ったのがサーブの配球です。

1stサーブの配球(ウィンブルドン公式ページスタッツより)

フェデラーは、両サイドともセンター、ワイドまんべんなく配球。そしてまんべんなくエースを取っている。ロディックは、的が絞りにくかったのではないでしょうか。

それに対してロディックは、両サイドともセンターに重点的に配球。しかしながらセンターへのサーブに関して、デュースサイドからのエースは多いが、アドサイドからのエースが少ない。

ロディック1stサーブ配球

ロディック1stサーブ配球。センター中心。

フェデラー1stサーブ配球

フェデラー1stサーブ配球。センター・ワイドまんべんなく。
フェデラーはロディックの配球をある程度読み、 特にアドサイドでのセンターへのサーブの返球率を高めてポイントにつなげたのではないか、という推測ができます。

ただ、観戦しているときはそのことには気づきませんでした。ひょっとしたら実況掲示板で美人女子プレーヤー談義に夢中だったからかもしれませんが・・・。

2ndサーブの配球ウィンブルドン公式ページスタッツより)

フェデラー、ロディックともに基本的には相手バックハンドへの配球が多くなっていますが、フェデラーが多少は(全体の20%ほど)フォア側へ配球しているのに対して、ロディックは全体の8%ほどしかフォア側へ配球していません。

ロディック2ndサーブ配球

ロディック2ndサーブ配球。バック狙い中心。

フェデラー2ndサーブ配球

フェデラー2ndサーブ配球。バック狙い中心だが、20%ほどはフォア側へプレースメントして意識させる。

この辺りもリターンの読み、そして返球率に影響し、じわじわとプレッシャーをかけることにつながったと思われます。
ビッグサーバーにとって、「ビッグサーブを何とか返してくる」プレーヤーはいやなものです。
ましてやフェデラーはそれを「深く」返球してきましたから、なおさらのことだったと思います。

3 件のコメント

  • あまりにも延々と続くファイナルセット、俺はいつ眠れるのか?頼むロディック、いっぺんブレイクさせてくれ~。

    という感じでした。この試合はあまりラリーが続くという雰囲気ではなく、短いポイントが多かったですね。両者のサービスが素晴らしすぎました。

    アンディがアンディに勝ったとき、ロジャー・ファンの僕は「しめた!」と思ったんですが、全然しめてませんでしたね。ロディックは素晴らしかった。。人相が変わりましたね。ずいぶん細面になっちゃって。動きもショットも信じられないくらい良くなっていると感じました。

    しかし、最後まで集中を保って戦いぬいたフェデラーが、苦労の末にやっともぎ取ったGS15勝目、そして世界no.1の座を取り戻したことを、じっくりとかみ締めながら喜びたいと思います。

    団長の分析は見事です。面白かった。僕としてはフェデラーのストロークのウィナーが少なく感じました。よく、信じられないようなカウンターのエースとか取ってたじゃないですか?それが少なかった。バックのダウン・ザ・ラインなども見られなかったし。あとドロップも少なかったですね。やはりサーブとレシーブの戦いだったからでしょうか?

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  • kon-gさんコメントありがとうございます。
    確かに目の覚めるようなカウンターはあまりありませんでした。
    ロディックはストロークも良かったですしね。
    2ndセットタイブレークの2-6からのバックハンドのショートバウンドの処理(合わせるだけでクロスに鋭くコントロール、十八番)にはしびれましたけどね。

    公式ブログ更新されてます。少し落ち着いてきた印象。
    http://blog.keinishikori.com/2009/07/from-zappin.html

      引用  返信

  • 確かにファイナルセットの最後の方のゲームで、あれっ、と思うガシャリミスが出てきて、ロディックが疲れてきているな、と私も思いました。それに対してロジャー様は、あと100回でもキープしてやるよ、と機械のようでした。
    Kon‐G の言われるように、フェデラーはリターンはスライス、ストロークは繋いでいるような打球も多く、ビッグショットがなくミスマチ?とか思いました。そんだけ余裕があったのかと思います。
    故に、あの2NDのタイブレ、バックボレーミス以降は、何となくフェデラーが勝つような感じがしてました。
    ナダル相手には、ミスマチでは先にやられてしまうんでしょうね。

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    ABOUTこの記事をかいた人

     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。