フェデラーの大逆転というよりハースが勝ち切れなかった4回戦

フェデラーが2セットダウンから大逆転でQF進出。ハースは惜しい星を逃した。

2009 Roland Garros French Open
Men’s Singles 4th Round
R. Federer[1] def. T. Haas, 6-7(4),5-7,6-4,6-0,6-2

自ら流れを引き渡したフェデラー

1stセット、フェデラーのサービスゲームは好調で、なんと24ポイント連続で奪う。
すなわち、タイブレークになるまでは1本もサービスゲームでポイントを落とさなかった。
しかしハースもしっかりプレーしてキープ合戦となる。

タイブレークに入ると突然、フェデラーにフォアのミスが続く。そしてフェデラーはこのセットを落としてしまう。
なんとももったいない展開だ。

2ndセットに入り気を引き締めたのか、フェデラーはギアチェンジ。第3ゲームをブレークするとそのまま4-2リードとなる。
ここで私は安心して風呂に入る。

しかし風呂から出ると、いきなりフェデラーの2セットダウンになっていた。

「フェデラーなにやっとんじゃああああああああああああああああ!」

ジョコビッチ、ナダルに続きフェデラーまでも・・・と心配になる。

勝負を分けた第3セット

普段の実力通りならハースは勝てる相手だが、2セットダウンからの逆転からとなると別だ。失敗が許されない分、プレッシャーとなる。
この日好調なハースのサーブを破るのは至難の業であり、自分のサーブのブレークは即、負けを意味する。

緊張が走る第3セットもキープ合戦が続くが、ハースのテニスが良い。
伸びのある球が安定して入り、凡ミスらしい凡ミスがない。
最近まで故障で戦線離脱を余儀なくされていた選手とは思えないプレー。これが世界2位まで行った選手の自力というものだろう。63位という現在のランキングは全く当てにならない。

(余談:錦織と同じIMG所属で練習相手のハース、しかも故障からの復活ということで錦織のことを考えました。リハビリは決して楽なものではないでしょうが、31歳のハースがカムバックできるのだから、19歳の(体の消耗がまだ少ない)錦織もカムバックできるのではないかと希望が湧きました。)

迎えた第8ゲーム、フェデラーから見て3-4でフェデラーのサーブ。30-40とマッチポイントに等しいブレイクポイントを迎える。
負けの予感が漂う。流れが良くない。
1st、2ndセットともに押しながら落としたフェデラーのプレーはハースを調子づかせてしまった。勢いは明白だった。
しかしここでフェデラーはフォアハンドでピンチをしのぐ。神通力。

偉大なチャンピオンは神通力を持っている。ピンチになると集中力が増す。とてつもないプレッシャーがかかる場面で信じられないショットを繰り出す。ナダルが、サンプラスが、ボルグら偉大なチャンピオンたちが持っていた(持っている)神通力を、フェデラーも持っていたはずだ。それが、ここでようやく出た。

第9ゲーム、ハースは40-15リードから明らかに硬くなる。ダブルフォルトを交えて、最後はボレーを大きくふかしてブレークする。
そのままフェデラーが3rdセットを奪い返す。

4thセットに入り、ハースの落胆は明らかとなる。それまで全く出なかった凡ミスが出てあっという間に0-6で落とす。
ファイナルセットも流れは変わらず、結局6-2でフェデラーが2セットダウンからの大逆転勝利。

確かにフェデラーの大逆転勝利だが・・・

確かにフェデラーと言えども、2セットダウンからの逆転勝利は容易なことではない。
序盤のまずい試合運びがあったとは言え、それをやってのけたフェデラーは称賛に値する。
しかしこの試合、「フェデラーが逆転勝利した」というより「ハースが勝ちを逃した」試合に思えて仕方がない。

結果としての負けは仕方ない。勝ちを意識して硬くなるのも、3rdセットを取られて気落ちするのもある程度仕方のないことだろう。
しかしそれにしても、抵抗力がなさすぎたように思う。
3rdセットの第9ゲーム以降は、フェデラーの14ゲームに対して2ゲームしかハースは取っていない。
まるで前半と後半で別人による2試合が行われたかのような印象を受ける。

あのナダルでもウィンブルドン優勝を目の前にして硬くなったし、フェデラーにも試合中に気持ちのアップダウンは見てとれることがある。しかし彼らは試合が終わるまでには我に返り、プレーのレベルを取り戻すことが多い。

ハースにそれができなかったことは大変残念。逆にそれができたときには、もっと大きい結果を残すことができるだけの実力を持っている選手なので、もうひと花咲かせてくれることを期待したい。

フェデラーにも不安材料がてんこ盛りだ。今回の試合運びのまずさは既述の通りだが、力の抜き方と入れ方が少しちぐはぐに見える。

「力の抜き方」としては、1stセット、サービスゲームが好調だからかリターンゲームでそれほどがむしゃらに行っていなかったように見えた。ハースの打ち込みを(あえて)あまり追っかけなかったりしたのがハースを調子付かせた一因だと思う。
チャンスを伺い、それが来た時に一気に畳みかけるというのは元々のフェデラーのプレースタイルでもあるのだが、もう少し早い段階で勝負をかけていいように思う。
2,3年前まではそれでも十分間に合っていたが、周りのレベルアップが著しく、圧倒的に強かった時代はもう戻ってこないと考えるべきで、タイミングを見切り過ぎると思わぬ事態に追い込まれると思う。
フェデラーはピンチを切り抜ける能力がずば抜けていると思うが、ピンチは招かないに越したことはない。

「力の入れ方」としては、ここ2年ほど、フォアの強引な打ち込みが目立つように思う。少しムキになっているように見える。
流れるようなテニス、言ってみれば「剛」の中にも「柔」を感じさせせるのがフェデラーの持ち味なはずなのに、最近はやたらと「剛」の部分が目立つ。
その結果、打っても打っても決定力が上がらない上に、アンフォーストエラーまで増えてしまっている。

私はボールを強く打つことよりも、ボールを深く入れることにもっと注力した方が良いと思う。特にクレーコートでは。

優勝するという目標のためには、1回このような大苦戦を経験するというのはプラスに働くと思うので、今年こそ念願のローランギャロスをフェデラーに獲ってほしいと願う、本当はサンプラス信者の私であった。
(フェデラーがウィンブルドンでサンプラスに勝った時はフェデラーを憎みましたw)

7 件のコメント

  • 実験的に「である」調にしてみましたが、読み返してみると結構威圧的ですね。やめよう。

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  • 私も完全に「フェデラー負けたな・・・。やっぱり
    全仏は取れないのか」って思いました。
    でも、テニスってやっぱりメンタルが大きく作用しますね。
    第3セット、第8ゲーム以降のハースは1,2セットの
    ハースとはまるっきり別人になっちゃいました。

    ナダル、ジョコビッチが敗れた今回、フェデラーにとっては
    おそらく最後と言ってもいいチャンスですから、是非とも
    優勝して欲しいと思います。そして、USオープンでは
    フェデラーVS錦織の夢の対戦を期待します。

      引用  返信

  • なんか雰囲気が違うと思ったら、である調でしたか。ハースちょっとかわいそうでしたが、これが実力。フェデラー勝って、ほっとしました。
    メルツァー、ロディックと破って勝ち上がってきたモンフィスも、急に良いなと思いはじめている今日この頃。

      引用  返信

  • 3rdセット、3-4の30-40はまじにアセッたのである。ここで一本取られたらほぼ負けである。

    しかしここで奇跡のようなショットをロジャーは放ったのだ。やや浅い位置からの逆クロスは、一瞬「アウト」に見える、際どいコースに飛んだのである。しかしそれはオン・ザ・ラインでエースとなった。

    この一本と、次のゲームでのハースのダブル・フォルトがこの試合の趨勢を決めたのである。

    WOWWOWさんのご厚意?で、第4セットの5-0で中継が切れてしまったのはまことに残念。12時からの放送で残りをやったのかもしれないが…。

    実は2セット落とした時点で一旦落ち込み、飯食いに出てそのまま飲んだくれていたのである。で、帰ってから3セット以降を半ばあきらめかけたような心境でビデオで観たのだ。5セット目はどんな内容だったかわからないが、とにかくフェデラー勝って良かった、ここで負けてしまってはトーナメント自体の興趣が削がれるではないか?

    団長のおっしゃるとおり、今ちょっとフェデラーは攻めが早すぎるような気がしないでもない。前戦、この試合とも途中でショットの精度が下がる時間帯がある。リターンの淡白なミスもやや目立つ。まだまだ心配は尽きないのであーる。。

      引用  返信

  • kon-gさん

    >まだまだ心配は尽きないのであーる。。

    同感なのであーる。。

      引用  返信

  • ハースは顔とバックハンドが正統派イケメンなので友人でも人気ですね。
    ただ彼は短気なのが弱点でダブルフォルトから崩れて勝ち試合を逃すことが多い選手でもあります。
    この試合もそんな感じでした。

    多彩な技術に脆い体と心を併せ持つもったいない選手、
    両手のナルバン、片手のハースを見てると心技体はどれが欠けてもダメなのだなという思いが強くなります。
    といって、試合分析を毎回メンタルに帰結させると興が削げますが。

    フェデラーは数年前の軽やかなフットワークに比べるとやはり足が遅くなっています。
    守備力に支えられた変幻自在の攻めがフェデラーの印象だったのですが、
    体力の衰えとともに晩年のサンプラスとアガシを足して2で割ったような、強烈だけど淡白なテニスに変わったように見受けられます。

    極端に省エネを意識してるので普段の3セットの大会では不安定でも、5セットのグランドスラムに強くキャリアを長く続けられそうなテニスではあります。
    現状と将来を見据えてシフトしたんでしょうね。

      引用  返信

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。