スライスを制する者は芝を制する・・・かもしれない

連日のウィンブルドン観戦で完全に寝不足な私ですが、皆さまはいかがでしょうか。

ラリーを見ているとさすがウィンブルドン、スライスが他の大会よりも多用されています。

芝はバウンドが低くボールが滑ってくるため、逆回転となるスライスが活きるサーフェスなのです(ボールがさらに低く、滑る)。

どのようにスライスが活用されているか、ちょっと紹介してみます。

(1)強打を防ぐスライス

スライスを滑らせて深く入れることにより、相手に低い打点を強制させます。

低い打点からはエースが取られにくく、無理して強打すればミスの元なので基本的にはスピンをかけて安全に入れに行きます。

そのショットが浅く入ったり、相手にとって打ちごろの高さに跳ねたりするのを嫌ってスライスをスライスで返球する場面も多く見られます。

緩いスライスをまた緩くスライスで返して「どうしてそういうことをするのだろう?」と思う場面があるかもしれませんが、こういうことです。自分はリスクを取りたくなく、相手にリスクを取らせたいのです。

(2)ストレートに流すスライス

ストロークの基本はクロスのラリーです。その中で相手を走らせるためにストレートに流すスライスが使われます。ちょっと面を流すだけで打ててしまうので、クロスと見分けがなかなか付きません。

さらに、サイドスピンをかけることもできますのでバウンド後にコートの外側に跳ねさせることによって、相手をコートの外に追い出すことができます。

相手を走らせるという意味では必ずしもスライスでなくても良いのですが、スライスはバウンドが低いので追いつけたとしても返球は意外と難しいです。浅めに打つストレートのスライスは、特にグリップの厚い選手には効果的です。

フラットショットよりもボールスピードは遅くなるので確率高くコートにインするのが長所です。エースを狙うというよりは走らせてオープンスペースを作ったり、ミスを誘うためのショットです。

早いタイミングで捉えたらネットへのアプローチショットにすることもできます。

(3)ショートクロスへのスライス

スライスはいやらしいショットですが、浮いてしまうと強打の餌食になります。そのため(1)(2)のショットを混ぜたり、時にはショートクロスに打って変化を付けることが重要です。ドロップショットとしてのショートクロスだけでなく、高い打点からは比較的スピードのあるスライスをショートクロスに配球することができます。

ここでもバウンドが低いスライスの特性が活きてきます。相手は追いつけたとしても、やはりスライスでの返球となる確率が高いでしょう。タイミングを合わせてネットに出ることができれば、あとはオープンコートにボレーを流すだけです。

ショートクロスへの切れるスライスはフェデラーのが絶品です。

(4)ブロックリターンのスライス

クレーコートではベースラインより3mも後ろでリターンを構えるナダルも、ウィンブルドンではベースライン付近までポジションを上げます。クレーコートではバウンド後の減速が大きいので後ろに下がることにより返球率を高めることができますが、芝で同じことをしたらノータッチエースの山を築かれてしまいます。

リターン位置を上げると当然ながらボールへの反応時間を短くしなければなりませんから、速いサーブに対してはコンパクトにブロックリターンをしなければなりません。

ブロックリターンをするときはスイングスピードが稼げませんので、面が上向きになるスライスを使うことが通常です。スイングスピードがなくてもボールの飛距離が出ます。リターンの返球率を高めるために必須の技術です。

また、サーブアンドボレーをしてくる相手の足もとにボールを送ることも容易です。

(5)アプローチでのスライス

スライスの利点の一つは、ボールを早いタイミングで捕えることが可能になることです。ボールの軌道の後ろに入りさえすれば、浅めの球に対して前に突進しながらボールを処理することができます。ボールスピードだけだったらフラットやドライブでの強打でしょうが、タイミングの早さやネットでのいいポジションに着くまでの早さまで含めて考えればスライスの方が有利な場合があります。

早めにボールを捕らえ、スライスで滞空時間で稼いでネットに素早く付き、かつ低いバウンドで強打させない、というのがスライスでのアプローチを行う目的です。

しかし一昔前と比べて、パッシングの技術は恐ろしく向上しました。ナダルのような選手が低い打点を苦にせず強烈なパッシングショットを打つようになりました。しかもミスしてくれません。昔ほどの優位性は無くなったと言ってよいでしょう。

それでも例えばロドラ、メルツァー、ロペス、鈴木貴男などのようにネットプレイを得意とする選手はスライスのアプローチを上手く使います。パスが強力だと言っても、ちゃんと狙った通りに打てればパスのコースをある程度限定させることができます。ネットプレイはパスを100%止めなくてはいけないというプレイスタイルではありませんので、抜かれながらもしつこく前に出続け、プレッシャーをかけて最終的には過半数のポイントが取れるようになればOKなのです。

スライスマスターのサントロ師匠のプレーが今年は見れないのは大変残念なことです。

男子の世界では昔よりはスライスは通用しなくなりました。これは間違いありません。しかしすでに述べたように多くの利点があるスライスは、必要なテクニックの一つとしてこれからも生き残っていくと思います。女子の世界ではスライスを有効に使う選手があまりいないだけに、逆に有効性が一昔前より高まっているように思います。昨年、クルム伊達公子がスライスを積極的に使ってウォズニアッキを苦しめた試合がありましたが、あの試合は女子テニス界に大きなヒントを与えたと思います(活用されているようには見えませんがw)。

伊達さんはスライスだけでなくボレーも非常に上手く、若い女子選手は学ぶものが多いと思います。ベースラインからの強打を主体にする選手ばかりの昨今、スライス系のテクニックに活路を見出す選手がもう少しいてもよさそうなものですが、なかなか現れませんね。

ちょっと話が脱線してしまいましたが、要は芝で勝ちたければスライス覚えて損は無いよ、でも昔(15年前くらいまで?)ほどの有効性はないので、「スライスを制する者は芝を制する」と言いきるにはちょっと苦しいかな・・・と思ってこのタイトルとなりました。

あーまとまらない記事。

1 個のコメント

  • 今年に入って10何年ぶりにテニスを再開しましたが、実際に試合形式になるとビビってフォアもバックもスライスオンリーになります・・・
    ボールの弾道でいえば、トップスピンのほうが安定性が高いと思うのですが、なぜスライスなのかといえば、スイングが単純で、自分自身でも、どうでもいい技術だと思ってるフシがあるからだと。
    スライスは上→下、ですが、スピンは上→下→上、と、動作が複雑ですね。
    あれこれ考えすぎる僕にはスライスのほうが合っている気がしました。
    というか、プロのスライスには何の関係もありませんね

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     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。