2017ワシントン2回戦 vs. ヤング 改めてレビュー

2017 Washington (ATP 500)
2nd Round
Kei Nishikori[2, WC] def. Donald Young, 6-3,4-6,7-6(5)

 昨晩、帰宅してからゆっくりと試合の映像を見ましたので、改めてレビューします。

 事前の情報は以下の通りでしたので、比較的ネガティブな印象を持ちながらビデオの視聴を始めました。

  • ファイナルセット・タイブレークとギリギリの勝利。
  • 1stセット、4ブレイクしたのは良かったが、ミスで2ブレイクされた。
  • 波に乗っていくべき2ndセットの最初のゲームで4つミスして被ブレイク。
  • ファイナルセットではBPをことごとく逃し、タイブレークまでもつれ込まされた。

 しかし予想に反し、「悪くない。むしろ結構良かった。」というのが視聴直後の率直な感想でした。
 確かに、以下のネガティブ要素がありました。

  • 確かに、ミスが多かった。特にフォア。
  • 確かに、ブレイクされたゲームはもったいない内容だった。
  • 確かに、ブレイクポイントはなかなか取れなかった。

 しかし、それ以上に以下のポジティブ要素がありました。

  • 攻めるという意志がはっきり見て取れた。ミスはそれに付随するもの。
  • ミスも多かったがウィナーも多かった。
  • 弱々しいミスではなく、「活きの良い」ミスであった。
  • 錦織にイライラ、焦り、迷いを感じなかった。
  • 動きが良く、どこかが痛そうな様子も無かった。
  • ファイナルセットはブレイクも出来なかったが、ブレイクされもしなかった。それどころか、BPすら与えなかった。
  • タイブレイクでも7-5と競ったが、ミニブレイク先行で安定した戦い方であった。
  • ヤングのプレーが後半、非常に良かったのも苦戦の原因。

 今年ずっと言っているように、ウィナー/ミスレシオ(ウィナーとミスの割合)に改善が必要です。が、ウィナーが取れないよりはよっぽど良い。先に光明が見えます。良くない負け方は「トーンダウン」してのもの。もしくは相手のキープ力の前に自分のサーブにプレッシャーがかかり、最後は我慢が効かなくなってブレイクされてしまうパターン。この試合はどちらでもなく、素晴らしいポイントと「もったいない」ポイントを繰り返しながらも、最後までレベルを落とさずに戦い抜いたという収穫のある試合だったと思います。

 課題はやはり、「試合を通じてのキープの安定性」でしょう。
 楽にキープしていても、突然ミスを連発してブレイクされてしまうことがあります。
 見ていても原因がよく分かりません。
 全仏でも、あれだけ素晴らしい1stセットの後にミス連発の2ndセットがありました。
 自信なのか、試合勘なのか、そもそも無理をしているのか、分かりませんがとにかくそういう現象があります。
 昨日も申し上げたように勝っていくことが一番の薬。「勝つためにまずは勝つ」というのが逆説的ではありますが。

 ブレイクポイントが取れないというのは、そんなに気になりませんでした。確かにファイナルセットは0/8でしたが、1stセットは4/8、2ndセットは1/1です。

 ファイナルセットの8本のうち4本は、1stゲームのものです。「取り切れなかった」のはこのゲームのことでしょう。
 その後、5-4での2本のBP(MPでもあった)はヤングのフォアハンドのオープン攻撃が厳しく入ってきましたし、基本的にヤングのプレーが良かったと思います。

 ブレイクポイントを取れなかったことよりも、デュースに追いつかれた後にあっさりとサービスでキープを許してしまうことの方が気になりました。

 ブレイクポイントに関しては、常々言っているように取得率だけを見ていては本質を見逃すことになると思います。
 取得率も大事なスタッツには違いないのですが、「数多くブレイクポイントを迎えること」自体も重要です。
 
 最終的に、「取得率」と「ブレイクポイント数」の掛け算である「ブレイク数」で勝負が決まるからです。

 例えば、ブレイクポイントでのプレーが以下の通りだったとします。(例えば、「0/5」は5本ブレイクポイントを迎えたが、ブレイクできなかったことを示す)
 
 リターン1ゲーム目 0/5
 リターン2ゲーム目 1/2
 リターン3ゲーム目 1/3

 この場合、ブレイクポイント取得率は20%、ブレイク数は2です。
 もう一例考えてみます。

 リターン1ゲーム目 0/0
 リターン2ゲーム目 0/1
 リターン3ゲーム目 1/1

 この場合、ブレイクポイント取得率は50%ですが、ブレイク数は1です。

 どちらが好ましいでしょうか? 当然、ブレイク数が多い前者ですよね。
 この2つはやや極端な例ですが、取得率だけ良くても、そもそもブレイクポイントを多く迎えなければ多くのブレイクは得られないと言うことです。
 
 ブレイクポイント取得率に代わる新たな指標として、

 「ブレイクポイントを迎えたゲームのうち、何%を実際ブレイクしたか」の方が、有効性があると考えますが、なかなかそういうスタッツはめんどくさくて集めにくいですね。

 上記の例でいえば、上の例では2/3=67%、下の例では1/2=50%となりますが、見ての通りサンプル数が少ないので、傾向を論じるためには中期的なスパン(少なくとも1か月以上)で見ていく必要があります。

15 件のコメント

  • 団長さん、こんな夜中に改めてのヤング戦レビュー、ありがとうございます。
    ふむふむ…同意…ふむふむ…なるほど…………いつもストンと胸に落ちる
    論理性素晴らしいなあ!と思ってしまいます。
    なのに「活きの良い」ミスって……………。その言葉の変さと妙によく実感できる
    絶妙な言葉選びに脱帽…ってか、吹きました( ̄▽ ̄)
    確かに……。いかにも活きの悪いミスもありましたよね………特に今年前半は……。
    そう言われれば「イライラ、焦り、迷い」はほとんど見えなかった。
    ミスっても凹んだりうつむいたり、ましてやラケットに当ったりもありませんでしたね。
    繰り返し見ましたけど、動きに躍動感もあったしなあ〜(^ー^)ノ
    団長さんのレビュー、錦織選手に見せてあげたい…気分です(⌒▽⌒)

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  • 昨年のバーゼルで錦織選手がデルポトロ選手に勝ったときのビデオを見直しました。
    試合を通じて大崩れせず持ちこたえて、デルポトロ選手のサーブの調子が落ちたとき、すかさず粘ってブレイクしていました。
    ヤング選手のとの試合は、私もあとで録画を見ましたが、団長さんも書かれているように、決して悪くないと思いました。もちろん、ヤング選手は勝ちにきていましので、こう言うと失礼きかもしれませんが、とても良い練習相手をしてくれたと思っています。
    デルポトロ選手との試合は、やってみなければわかりませんが、ラリーも結構続きますし、ビッグサーバーではありますが、錦織選手としても結構好きなタイプの一人ではないかと感じました。
    いすれにしても、デルポトロ選手との試合は本当に楽しみです。
    錦織選手も試合を楽しんで、かつ勝ってもらいたいと思います。

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  • どこまでも圭さん、私も先ほど勝ったデルポトロ戦見ました!
    予習の気分で( ̄▽ ̄)
    ヤング戦はいい練習になったというのはホントヤング選手には失礼な言い方ですが
    内容の濃い実戦編の練習になったと私も思ってしまいました(⌒-⌒; )
    プレーを楽しんで結果的に勝てたら、そりゃあもう、言うことなしですね(^ー^)ノ
    私たちも余裕を持って、応援する楽しさを味わいたいものです。
    って…自信ないですけど(笑)
    明日8時以降ですね。もう寝ないと!

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  • ATPの錦織選手のスタッツのサイトでは、プレーしたサイビスゲーム数やリターンゲーム数と共に、トータルの直面したブレークポイント数や、ブレークポイント機会数があるので、それらのゲームごとの数字を計算してみました。結果を同じ場所にアップロードしています。考察は、フォーラム鼻血ブログ分析班「ATPランキング」に書いています。

    1)サービスゲーム当たりのエースとDF数 (右端上プロット)
     2017年のエースは0.25/サービスゲームで、最も良かった2014年の0.35/サービスゲームから−30%減っている。
     2017年のDFは0.16/サービスゲームで、最も悪かったキャリア初期から比べると半分以下に減っている。
     サービスゲーム当たりのエース数とDF数が逆転したのは、2014年。

    2)サービスゲーム当たりの被ブレークポイント数とリターンゲーム当たりのブレークポイント機会数 (右端下プロット)
     2017年は0.54被ブレークポイント数/サービスゲームで、最も良かった2015年の0.40被ブレークポイント数/サービスゲームから+35%増えている。
     2017年は0.67ブレークポイント機会数/リターンゲームで、最も良かった2012年の0.79ブレークポイント機会数/リターンゲームからー15%減っている。
     ゲーム当たりの被ブレークとブレークチャンスの機会が逆転したのは、2011年。

    ツイッターで指摘があったように、2017年の数字はWB終了時のため、クレーとグラスのウエートが大きく、再開幕したハードコートだと特にサービスのスタッツは向上し、リターンのスタッツは下降するはずです。また、春先の錦織選手の手首のケガの影響もあります。ただ今年トップ20との対戦が少なく1W−6L(2016年WB後同時期まで7W−9L)であることを考えると、上位陣ともっと対戦していたら、昨年同時期と比べて、数字はもっと厳しいものになっていただろうとも思います。

    「ブレイクポイントを迎えたゲームのうち、何%を実際ブレイクしたか」の計算はすぐにできませんが、上のサービスゲーム当たりの被ブレークチャンス、またはレシーヴゲームあたりのブーレークチャンスはある程度の指標を与えると思います。

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  • 団長さんへ
    スポナビライブの無料放送は1、2回戦のみで3回戦は有料です…すなわちデルポトロ戦は登録なしには観れません。

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  • あけびさん、同感です!
    団長の的を得たコメントや鱧さんの緻密な分析を、錦織選手だけでなく、チャンやダンテコーチと共有してもらいたいです。そして団長がチーム圭の一員ならいいのに!ファミリーボックスにいる団長を想像しちゃいます‼︎ っといっても団長のお姿知らないけど….。

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  • (03:40のコメントのお詫び)
    禮さん、お名前を間違えて表記して大変失礼いたしました。

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  • @おけい さま、@Ponpa さま、

    わざわざありがとうございます。紛らわしくてスミマセン(元々間違えたのは小生の責任じゃないのですが、ブツブツ、笑)。お気になさらず。

    小生のは解析とも言えない素人の戯言で、錦織陣営は百も承知のことだと思います。マレー陣営とかは人を雇って、ホークアイとかの(ビッグ?)データ解析していると思います。ワシントン直前の記者会見で錦織選手はWB後何をやったか聞かれて、「1週間ハードトレーニングできたのはよかった。技術的な面では特に変えたとろころはなく、やるべきことの確認が主だった」(正確でないかもしれません、スミマセン)と答えていたと思います。これを聞いて、WB後1ヶ月あったけどそこで何かイジったわけではなく、錦織陣営は(たとへ不調と言われようが)少なくとも今シーズン最後までの技術的、戦略的なことはとっくにすべて解決または決定済みで、それを復習しながら実行に移すのみという戦略なんだなと感じました。体力面は、RGのマレー戦敗退後のインタビューで錦織選手は(手首のケガからの復帰直後、右肩の問題もあったにも関わらず)「体力的には決勝戦まで大丈夫だった」と語っています。なので陣営としてはいつでもMS/GSを狙える体制は整っているとしているのだと思います。素人の間違った思い込みかもしれませんが。

    先日、団長さんのツイッターで、「スマッシュ9月号掲載のジョコの2010年のサーブフォームの改善点は、錦織が現在抱えているフォームの問題点とかなり被る。ということは同様のフォーム改善でスピードと安定性のアップを図れると思うがどうだろう」というコメントがありましたが、錦織選手がもっと早い(若い)段階でやるならともかく、現在キャリアピーク(一般にはテニス選手のピークは28−29歳と言われます、最近長寿化しているし、錦織選手はワシントンのインタビューで「体がもつかどうか分からないができるだけ長くやりたい」と答えています)を迎えつつある錦織選手にとって、ではフォーム改造・改善するならいつできるのか?と考えてました。夏がムリなら、シーズンオフということになりますが、(小生はくだらないと思う)バラエティ番組TV出演とか止めて(どうしてもフォーム改造・改善が必要なら)やって欲しいと思ったのですが。1月にはAOがあるので、その後という時間帯もあるか、などと素人考えを巡らせてました。まあ素人が口出しすることでないですが、1ファンの夢想ということで。

    なので、では本当に錦織選手のサーヴやレシーブの実力は落ちているのか?と思い上の簡単なスタッツを調べてみたわけです。コメントしたようにシーズン半分でクレーのウエートが高く、また下位選手との対戦が多く、すぐには昨年までのスタッツとは比べられませんが、DF率は激減しているもののエース率とかサービスゲームキープ率が大きく落ち込んでいるのは確かです。またブレークポイントを相手により与え、自分のブレークポイントチャンスは少し減っています。一番重要なトータルポイントも昨年から1%減って52%で、これはたかが1%ではなく、55%取ればNo.1になれるのですから、0.1%が効くシビアな数字です(ATPのデータは52%としか出ませんが、有効数字が3桁は必要で、52.1%とかにするようにサイト下の要望欄から要望を出そうかと思っています、52、53、54、55%では意味がない!)。

    モントリオールは、半分予想してましたがマレーも欠場で(ジョコビッチ、ワウリンカ、チリッチ軒並み欠場)、1ナダル、2フェデラー、3ティーム、4ズヴェレフ弟、5錦織、6ミロッチ、7ディミトロフ、8ツォンガのシード順となりました。こうしてみるとたった10pの差で4位と5位に分かれてしまうのはちょっと悔しいですね。たかが10pの重みを感じてしまいます。

    ワシントン3Rのデルポトロ戦、難しい戦いですが、勝ったらUSオープンへ向けて展望が開けると思います。

    また長文・駄文失礼いたしました。

      引用  返信

  • ヤング戦、ことごとくチャンスを逃してたけど内容は悪くなかったですね。
    序盤~中盤の1stサーブポイントとれない病発動はいつものこととはいえなんとかならんもんですかね。
    でるぽんはあまり調子良さそうではないですが、まあ苦戦は必至かな。

      引用  返信

  • 団長さんに同意。
    スコアやスタッツから感じる印象と、観戦した印象がこれほど違う錦織君の試合も珍しいと感じました。

      引用  返信

  • @禮 さん
    なんでせっかくのオフにあんなにバライティー番組に出るのでしょうね(わたしもくだらないと思ってます)。
    なにかいろんな事情があるのでしょうか…。

    ヤング戦、ライブでファイナルタイブレークだけ映像で見られたのですが、なんでフルセットになったのかよくわかりませんでした。
    錦織くんに余裕があるようにみえたので。

      引用  返信

  • @ユーリカ さん

    指摘ありがとうございました。修正しました。
    最初みたとき、金曜日まで無料って書いてあった気がしたのですが、気のせいだったのか・・・

      引用  返信

  • 禮さん

    承認待ちにならない、コメント中のリンク数を10まで引き上げました。
    つまり、

    コメント中にリンクが10個までなら承認不要
    11個以上なら承認待ち

    になります。

    今までは「7個までOK」と説明していたかと思いますが、おそらく「7個になったら承認待ちになる」の間違いだったと思います。失礼しました。

    承認待ちはなかなか気づかない(管理画面を見に行かないと気づかない)ので、承認待ちになり、急ぎでアップしたい場合はコメント欄かメールでご連絡ください。

      引用  返信

  • 昼休み、残念ながら圭の試合まで行かず^^;

    ティエム、負けましたね><

      引用  返信

  • @netdash さま、
    設定変更ありがとうございます。最近はリンクばっかり貼るのもなんだかと思い、たいてい2−3個にしてますが、数日前に承認待ちが1つありました(ユーザーにはコメント欄上部に水色の背景の承認待ち警告が出るので、他の人には見えていないというのは分かります)。

      引用  返信

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    ABOUTこの記事をかいた人

     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。