錦織圭、痙攣を乗り越え鬼攻撃モードにチェンジ。タイブレの鬼も久しぶりに出現で鬼勝利(2025インディアンウェルズ1回戦)

2025 Indian Wells (Masters 1000)
1st Round
Kei Nishikori def. Jaume Munar, 6-2,5-7,7-6(3)

2月はダラス、デルレイビーチと不調が続き初戦敗退。デ杯出場により過密スケジュールとなり、フィジカルが低下してしまったことが要因にありました。
試合間隔が約3週間開き、どこまでリフレッシュできているか、不調が単なる疲れによるものか、それとももっと根が深いものなのかを見極めようと観戦に臨みました。

結果、試合が始まると足取りも軽く、平然と試合していて拍子抜けしました笑 やはり適度に試合間隔を取ることは重要ですね。

試合は序盤からムナーが前回対戦同様、持ち味のしつこさで粘っこく返してきますが、錦織は見事にコーナーを攻め4-0に。チャンスではあっさり取り、ピンチは粘って凌ぐという理想的な試合運びでした。

1stセットはそのまま6-2。ただ、DFが3本あり1stサーブもスピンで入れにいく場面が目立ち、サーブの調子は良くなさそうでした。

2ndセットに入るとムナーに粘り切られる場面が徐々に増え、ミスも出て0-2に。ただムナーも欲しい場面でミスしてくれ、追いつくと錦織が調子を上げ、4-3の1ブレイクアップまで持って行った時はこのまま押し切るかに思われました。

しかしそこから、攻め続けてはいるもののフォアにミスが出て、サーブもアドサイドスピンからのサーブアンドボレーに慣れられストレートのリターンを食らってしまい、2連続ブレイクされ5-7でセットを落としてしまいました。
アドワイドスピンでのサーブアンドボレーはアクセントとして使う場合には効果的ですが、ワイドサーブはストレートに打つことも角度を付けることもでき、読まれるとリターンエースを取られるリスクが高まります。

このあたりのサービスゲームの安定性が最近の課題ですね。1stサーブからの得点率が60%を割ることが多く、やはり確率を落としてでも打っていき、フリーポイントを増やす必要があります。

疲れの出るファイナルセットは省エネでサービスゲームに集中するモードに変えたように見えました。選択として正しいと思いますが、戦略なのか単なる体力ダウンなのか、見分けがつきづらいのでいつもドキドキします。
ムナーはずっと元気だったので、1ー2で左膝の治療のMTOを取り 、2-2で足に痙攣が来た時は、負けを覚悟しました。

しかしそこから諦めないのが錦織圭。足は使えないのでショットの威力でハイリスクハイリターン戦略に移行します。ミスは許容しながらそれ以上にウィナーと取っていく戦略です。

一定以上の精度が求められ、足が使えないので1球返されるごとに期待値が下がってしまうという難しい戦略です。ただ、普通にプレーしていては確実に負けてしまうので正しい選択でした。
サーブも膝を曲げないシンプルなフォームでスライス系に変更。はっきり言って、最初からその方が良かったw
開き直りが良い方に働き、なんとその痛めた足でブレイクして4-3!
どうしても安定感には欠ける戦略なので、ミスが出た第8ゲームをブレイクバックされしまうものの、第10ゲームごろからは持ち堪えた足が少しずつ戻ってきて、押し始めます。

タイブレークではさらにサービスやリターンまで良くなってしまい、またもや錦織劇場。負けると思ってからの勝利は格別です。
鬼攻撃モードが成功、タイブレークの鬼が久しぶりに出現した鬼勝利と言って良いでしょう。

と、もう慣れっこになったアップダウンの多い試合でありましたが、錦織のテニスに勝負強さが戻ってきたのは、(痙攣はあったものの)フィジカルが戻ってきたからでしょう。

ダラスのマハチ戦では打ちまくられてポイントを取るのも大変だったし、デルレイビーチのマクドナルド戦では得意のファイナルセットで、今日のような終盤のギア上げができませんでした。これらはとにかくフィジカルの問題でした。

そのフィジカルの問題が、一時的なものだと今回の試合で証明されたので、本当に安心しました。
ほぼ3時間に及ぶ激戦で、35歳が27歳(しかも体力お化け)を終盤突き放すというのはすごいことです。

ムナーは前回対戦の方が良かったですかね。持ち前の粘りは見せましたが、錦織が苦しい場面で突き放すことができなかった。錦織の攻撃に対するディフェンスでボールを返すこと以上の余裕がなかった感じでした。

負けていたとしても復調気味だったので問題だったとは思いませんが、それでも負けたら3大会連続の初戦敗退となり、一般には心配され始めるような状況でした。またポイント的にも失効点のない今のうちに少しでも稼いでおきたいので、その意味でも大きな勝利でした。

「フィジカル的に苦しみ、諦めそうになった。」と試合後インタビューで語った錦織ですが、弱気な気持ちが出てきてもプレーは別物で目の前のやるべきことに集中できるのが錦織の強み。この強みは歳を取ろうが消えるものではありません。非常に大きな強みです。

2 件のコメント

  • 団長さん、レビューをありがとうございます。

    「弱気な気持ちが出てきてもプレーは別物で目の前のやるべきことに集中できるのが錦織の強み。」とおっしゃっているところ、私たちが棄権するかもと思い、本人も”これはヤバイ”と思ったに違いないが、それでも何とかしてやり抜こうと体は動いていたってことですよね。
    痙攣が出てから、ベンチでは懸命に塩分と水分を摂り、プレーも集中し工夫し、しかも悲壮感とかではなく、涼しい顔で「鬼攻撃モード、タイブレの鬼」と化してました!

    怪我による長期離脱の間に感じていたテニスへの飢餓感が、今は試合に出ることで満たされて、ピンチの時でも充実した表情になっているのかな、と思ったりします。

    本人の言で「デルレイビーチでも痛みがあり、なんかフルでプレーできなかった」、「先週までボロボロ」だった。復調の兆しが見えたのはIWの数日前。「ここらで勝って、(2連敗の)モヤモヤを晴らしたいなと思います」と開幕直前に言っていた、とあります。(下団さんご紹介の内田さんの記事より)

    1月末から2月初め、日本でのデ杯からアメリカへの移動も含めた過密スケジュールは、やはり体に大きな負担がかかったんですね(IWをスキップしたヨッシーも同じかも…)。
    錦織は初戦敗退が2連続で相当悔しかっただろうけれど、今回は体にはまとまった休養が必要だったんだ、と思いました。

    IWの1回戦について「フィジカルの問題が、一時的なものだと今回の試合で証明されたので、本当に安心しました。」という団長さんの思いは、錦鯉全員の思いでもあると思います。
    これからはできるだけ無理のないスケジュールを組み、連戦連勝などでやむなく過密になった後は、初戦敗退でいいとは言わないけれど、何とかして少しでも休養を取れるようにスケジュールを組んでほしいなと、本当に僭越ながら錦鯉の端くれとしてそう思っています。
    錦織テニスは観戦するのが楽しい、体が丈夫ならなおのこと!

      引用  返信

  • 「目の前のやるべきことに集中できるのが錦織の強み。」
    本当にそのとおり!ですね。
    錦織選手の試合を見ていると「”今現在”に100%集中できる」という特性が活かされているのを実感します。
    「ミスしても切り替えが早い」のも、「過去の対戦を”いい意味で”忘れてしまう」のも、こうした錦織選手の「今現在に100%集中」するという特質がゆえ、なのだろうと思います。

    団長さんの仰るように、ダラス、デルレイビーチの2大会はフィジカルの問題を抱えていたことが敗因だと思います。
    ずっと以前から「錦織選手が試合に負ける時は(圧倒的に実力が上の相手の場合はともかく)たいがいフィジカル面に問題があることが多い」と感じています。
    年齢を考えればこれからはフィジカル面、身体の回復がいっそう重要ですね。
    そうした意味でもサーブの重要性は高まります。
    課題は「自分のサービスゲームのキープ」に尽きると思います。

    無理しないスケジュールで長く続けてほしいです。

      引用  返信

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

    ABOUTこの記事をかいた人

     テニスを愛する理系人間。よく理屈っぽいと言われる。  プレースタイルはサーブアンドボレー、というよりサーブ。ストロークは弱い。  2008年2月15日に本ブログを開設。その数日後に錦織圭はあのデルレイビーチ優勝を成し遂げる。  錦織圭の存在を知ったのは2004年。その後2006年全仏ジュニアベスト8で再注目。2007年のプロデビュー(AIGオープン)で錦織の試合を初観戦。その後の活躍を確信し、今に至る。